私たちを結ぶもの (Page 2)

「うそ、でしょ……」

すやすやと気持ちよさそうに眠っているけいちゃんの横顔を見るけれど、心はちっとも休まらない。

親睦会でお酒を大量に飲んだのはなんとなく覚えている。

それ以降からここまでの記憶がさっぱりなくなっていて、でもこうなってるってことはきっとそういうことがあったわけで。

けいちゃんとはそんなに仲が悪いわけではないし、かといってこれがきっかけで気まずくなるのも嫌だし、起きないうちにそっと抜け出してしまおうと私は静かにベッドから降りようとする。

しかし、腰にけいちゃんの腕が伸びてきて動けなくなった。

「ちょっ……けいちゃん、まさか起きてる?!」

腕から逃れようとするけど、ちっとも動かない。

そのうちに私はベッドに引きずり倒され、眠そうな顔のけいちゃんに組み敷かれてしまった。

「け、けいちゃん……おはよ……」

「ん……」

けいちゃんを見上げて、ようやく私は気付いた。

端正な顔立ちの、先ほどまで下を向いていた側の頬が赤く腫れあがっている。

「けいちゃ……これ、どうしたの」

「……覚えてないの?」

手を伸ばすと、私の手の上に手を重ねてけいちゃんは頬を撫でさせた。

「お前が泥酔させられて、お前んとこの課長さんに持って帰られそうだったから、つい」

けいちゃんにそう言われて、なんとなく思い出してきた。

そうだ、あの親睦会の時、やたらと課長にお酒を勧められて、それで酔いつぶれたから送っていこうって連れて行かれそうになった時、けいちゃんが声を上げてくれたんだっけ。

「覚えてるかわかんないけど、お前けっこう身体触られてたんだぞ」

そう言ってけいちゃんは、私の脇腹をすっと撫でた。

触れるか触れないか絶妙な距離感での触れ方で、私はくすぐったくて思わず身を捩らせる。

「それを見て、オレ、ムカッときて……思わず殴りかかったらちょっとした乱闘になってさ」

それでできた傷だったんだ。

とっても申し訳なくなって、私は身体を起こしてけいちゃんに抱き着く。

「ごめんね、ありがとうけいちゃん……」

「ん……全然」

私の背中をポンポンと優しく叩いた後、けいちゃんは私の目を見る。

今まで見たことのない熱を持ったけいちゃんの瞳に男を感じて、私の胸は高鳴った。

「むしろ謝るのはこっちなんだけど……」

「え、なんで」

「だって……オレ、周りの人に課長さんから引き剥がされた後、すぐにお前を連れてここに来たんだぜ?」

するりと私の頬を手の甲で撫で、けいちゃんはおでこをコツンとぶつけてきた。

甘えるようにそのまま左右に擦れさせ、囁くように続ける。

「自分を抑えきれなくて酔っぱらったお前を襲うなんて最低だった、ごめん」

やっぱり、この感覚は気のせいとかではなくて、本当に私、けいちゃんとシちゃったんだ。

なんでだろう、不快感とかは全くなくて、逆に嬉しいとすら思えてしまう。

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    3

    ねむ さん 2020年9月2日

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