私たちを結ぶもの
石倉麻美と高橋敬一郎は、お互い転勤族という身でありながら幼い頃より度々出会いと別れを繰り返していた。成人後、麻美は勤め先の会社の本社と支社の合同会議で敬一郎と再会する。そのまま夜の親睦会に参加した麻美は、気付くと敬一郎と一緒のベッドに寝ていて……?!
運命って、きっとあると思う。
それは私と相手を結びつける、不思議な何か。
切っても切れない、不思議な縁。
なんて素敵な風に語られる縁も、何度も続けば腐れ縁と呼ばれるようになる。
「やっぱり麻美だったか……」
「やっぱりけいちゃんだったんだ……」
顔を合わせるなりそう言った私、石倉麻美の正面に立つのは因縁の相手と言っても過言ではない高橋敬一郎。
私とけいちゃんは同い年で、二人揃って転勤族だった。
さよならしたと思ったら、次の転校先でまた出会うことを繰り返し、今度は転勤ではなく大学を選んで進学すればそこでも出会い、そして今。
別の会社に入社したと思ったら、なんと私は支社勤めのけいちゃんは本社勤め。
私たちは合同会議でそれを知ったのだった。
「いやあ、やたら仕事ができる期待の新人がけっこうイケメンだって話は聞いてたから。ああ、けいちゃんっぽいとは思ってたんだけどさ……」
会議が終わってのランチタイム。
私はけいちゃんと連れ立って近くのカフェに来ていた。
サンドイッチにかぶりつきながらぼやく私に、ブラックコーヒーに砂糖をこれでもかというほどつぎ込んでいるけいちゃんが答える。
「オレも最近支社に入ったドジなくせにやる時はしっかりやるアイドル似の女の子がいるって聞いてたから、ああ麻美だなと思ってたんだが、まさか本当にそうだったとはな」
「え、何その噂。ドジって何。私なんかやったっけ」
「教えなーい」
満足いくまで砂糖を溶かした甘いコーヒーを飲みながらけいちゃんは言う。
「それより夜の親睦会、来るのか?」
「もちろん行くよ!けいちゃんもどうせ行くでしょ?」
「どうせってなんだよ。まあドジなお前が心配だから行くけど……」
「そんなドジやってないと思うんだけど」
「昔からやらかしてんだろ。覚えてないのか?ほら、小三の頃グラウンドで……」
「うわー!知らなーい!!聞きたくなーい!!!」
もう成人して数年経つというのに、私たちはわいわいと学生のように騒ぎながらすっかり話し込む。
不思議なもので、転勤族のはずなのに私とけいちゃんはずっと一緒だった。
それはまるで、幼馴染のように、兄妹のように、家族のように。
これからもふんわりとしたそんな関係が続くのかなって思っていた。
思っていたのに。
「なにこれ」
気付いたらベッドの中だった。
暗い部屋、見知らぬベッド、知らない香り、隣に寝ているのは裸のけいちゃん、そして裸の私。
私も流石に知識が何もないお嬢様ではない。
何が起きたのかはなんとなくわかっている、というより下腹部に感じる経験したことのない感覚がそれを伝えていた。
良かったです…ちょっと感動
ねむ さん 2020年9月2日