大学にOBとして来た彼のにおいに、うずく下半身。ある夜、街中で見かけた彼に、声をかけたらホテルに連れていかれ…
大学のテニスサークルにOBとして訪れた年上の男性。出会ったそのときから、彼の『男』のにおいに惹かれ、下半身がうずいてしまう。ある夜、その彼を見かけた私は思わず声をかける。彼は人気のない道に私を連れて行き、深いキスをしてくる。「ホテル、行く?」という彼の言葉に、私はうなずいた。
彼のにおいが漂ってくるだけで、身体の芯が熱くなってしまう。
大学のテニスサークルに顔を出した、
OBの彼。二十三歳の、清水樹さん。
一目見たときから、骨ばったからだつきと整った顔立ち、そして長いまつ毛に縁どられた深い瞳に、胸が高鳴った。
そして、艶のある血色のいい唇から紡がれる声は、驚くほどイケボだった。
低く深みのある声は、私の鼓膜からしばらく離れなかった。
清水さんが私の横を通り抜けた際、石鹸のような清潔な香りがした。
お風呂に入ってから大学に来たのだろうか。
そのさわやかな香りの中に、野性的な『男』のにおいが混ざっていた。
何故だか癖になってしまうような、混ざり合ったにおい…。
テニスコートからどんどん遠ざかっていく彼の背中。
手を伸ばして呼び止めたかった。でも、どうしてもあと一歩の勇気が出なかった。
土の香りが立ち込むコートにたたずんだまま、私は乱れた呼吸を落ち着かせようと、深呼吸をした。
けれど下半身の奥深くのうずきをおさえることはできなかった。
*****
清水さんを見かけたのは、街灯のきらめいた大学の近くの駅前だった。
彼はスーツを身にまとい、タオルで汗をぬぐっていた。
テニスコートに現れた際はシャツにハーフパンツだったから、すぐには清水さんだと気付かなかった。
でも、彼とすれ違う瞬間に嗅いだことのあるにおいが鼻腔に入ってきた。
「清水…さんですか?」
私は緊張のせいで汗ばむ手のひらを握り締めながら、彼に声をかけた。
「え、そうですけど…。あれ、君は確か、テニスサークルの…」
清水さんは思い出したようだった。
驚きとどこか喜びの混じった表情で、私の顔を見つめる。
「三年の蓮本美緒です。すみません、突然声かけて。…つい、声をかけたくなってしまって…」
清水さんへの興味は、どこから来るものなのか、自分にもわからない。
けれど、彼のにおいを感じると、身体が落ち着かなくなってしまう。
それは恋心なのか、それとも本能的な反応なのか…。
自分の気持ちがわからず戸惑っていると、彼は私の身体を頭から足元まで一通り視線でなぞり、ふっと笑みを漏らした。
「テニスサークルで、一番、魅力のある子だと思った。スタイルの影響だけじゃなくて、何か、そそられる」
そう言って、清水さんは突然私の手を取り、ゆっくりと引っ張っていく。
私は困惑し、何も言えずにただされるがままについていった。
どうなるんだろう、私。
不安が膨らむ反面、どこかワクワクもしていた。
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