私にセフレが必要な理由
まどかは結婚しているが、セックスを通じてつながっている男、修の存在がいる。ふたりはセックスをしたいときに連絡を取り合いからだを重ねる関係だ。これは不倫なのか。だがまどかは不倫という言葉には抵抗感があった。まどかは本当にセックスがしたいだけなのだ。そう。今夜も---。
修さんとの仲をひとことで表せば「セックスフレンド」になる。
ふと肌が恋しくなった時、連絡を取って抱き合う。
それだけの関係。
男女の付き合いのわずらわしさ、たとえば記念日やらなんやら、そんなものは私たちの間に介在しない。
セックスしようか。
セックスしよう。
お互い気が合えばからだを合わせる、そういう関係。
ほんとうにそれだけなのだ。
お互い家族があるし、不倫の関係というのが世間一般的な呼称だろう。
だがなんだか違うのだ。
不倫なんて言葉が重い。
本当にセックスだけでつながっているだけなのだ。
言葉にしようとすると冒涜的だし、言い訳が増えていく。
セックスフレンドが市民権を得てほしいわけではないが、それ以上でもそれ以下でもない。
*****
メッセージアプリの通知音が鳴った。
「今日OK?」
修さんの短いメッセージ。
私はOKの絵文字を送る。
途端股間がうずいて来る。
今日はこどもたちは実家だし夫は出張。
明日は休日。
たっぷりと修さんとのセックスが楽しめる。
ホテルを予約して、バーで待ち合わせる。
修さんが急ぎ足で現れた。
セックスの誘いに大慌てでやって来るなんて、思春期かよ。
すらりとした体躯、ちょっと気色ばんだ顔。
可愛くて吹き出しそうになる。
「なにか一杯飲んでく?」
「じゃあジントニ。久しぶりな気がするな。まどか」
「ここのところなかなかスケジュールが合わなかったものね」
家庭のことやら仕事やら色々ある。
セックスを楽しむのも大仕事だ。
「部屋取ってあるよ」
「ありがとう。まどか」
修はそう言うとジントニックをグッとあおった。
気がせいてるらしい。
この性急さもまたいい。
求められてる感じがして。
私と修はほぼ同時にスツールから立ち上がった。
いい大人がガツガツしているのが丸わかりだがそれも楽しい。
私は修の腕に手をまわすなんてしないし修も私のバッグを持つなんて真似はしない。
ふたり快楽の予感にわき立ちながら、あえてつまらない話題でお茶を濁しつつ部屋に向かう。
場面転換
「ふっ。ううん。んん」
部屋に入るなり組み合うようにしてお互いに抱き着いて、唇をむさぼる。
ホテルの部屋の扉を超えたらふたりの世界の始まりだ。
「あっ。うん。ふぅうん」
舌の肉と肉が絡み合う粘っこい音がする。
修の舌が私の歯列をなぞる。
ぞくぞくと背中に戦慄が走る。
修は私の唇を吸いながら、背広を脱ぎ、ネクタイを外した。
私もブラウスのボタンに手をかけ、ひとつひとつ外していく。
「まどか。ああ、まどか」
ベッドにもつれあって倒れこむと、再びキス。
修は私の下唇に歯を軽く立て、こぼれた唾液を舐め取る。
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