雨宿りはコーヒーの香りと共に (Page 2)
ぼんやりと街灯の光を目で追いかけていたら、あっという間に着いたようだった。
湯沢さんに誘導されて家に上がると、コーヒーの香りが真っ先に鼻先をくすぐった。
「いい匂い」
ぽろっと言葉を零すと、湯沢さんは微笑んで答える。
「でしょ。英ちゃんは知らないかもしれないけど、俺、コーヒーを淹れるのも得意なんだよね」
「そうなんですか」
「いつもカクテルばっかりの英ちゃんには縁がないか」
「酒飲みなのは否定しませんけど、コーヒーも飲んでみたいです。……またお店に行っていいなら」
言葉がどんどん小さくなっていく。
今から本当に抱かれるとして、またお店に行っていいものなのか。
不安そうに言う私に対し、湯沢さんはあっけらかんと言う。
「何言ってんの、来てくれないと俺が困る」
「え……」
「それより、シャワー浴びておいでよ。そっちのドアの奥ね」
やっぱり本当にするの?
湯沢さんは普段から淡々とした対応ばっかりで、私はその軽くあしらわれてる感じが好きだったんだけど、本当なのか冗談なのかわからない。
このまま寝るだけだったりしない?
そんな淡い期待は砕かれ、シャワーを浴びて湯沢さんの番が終わるまで待っているとベッドへ連れていかれ、押し倒された。
抱いてくれと言ったのは私からだったけど、ここまで本気にする?
「マ、マスター……」
「ここはもう店じゃないんだけどな」
すり、と頬を撫でられる。
いつも私が大好きなカクテルを作ってくれるこの指。
その指が頬を伝い、首筋を辿り、鎖骨を撫でる。
「ゆ、湯沢……さん……」
「なんだい英ちゃん」
「あの、本気ですか」
「本気だよ」
「どうして……」
「英ちゃんが望んだから」
いつも通り淡々と答える湯沢さんにどこか安心感を覚えつつも、私の身体をなぞる指の感覚にゾクゾクとしてしまう。
身体の奥底から疼きを引っ張り出されて、私の身体はすっかり雄を求めてしまっていた。
「湯沢、さ……」
「俺が忘れさせてあげる」
ああ、ダメだ。
湯沢さんのこの安心感なら、身を任せられる。
身を任せてしまう。
毎回楽しみに拝見させていただいております。今回もとてもえっちでよだれを垂らしながらドキドキして読ませていただきました。湯沢さんの熱意に答えるように身体から心が繋がる英ちゃんがたまらなく好きです。また次の作品もひっそりと楽しみにしています。
犬好きの匿名 さん 2020年7月7日