モラハラ彼氏に傷つけられたOLは御曹司に溺愛される。

・作

彼氏の数々のモラハラや暴言にすっかり自信をなくした美奈は、会社の御曹司である藤堂課長に相談にのってもらうことに。そこで「奪ってやりたい」と迫られて、彼氏がいるのにこんなこと…でも藤堂課長に優しく触られるほど彼に没頭していき…

美奈は、デスクに広げた書類の文字がぼやけて見えた。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
昨日、彼氏の陸と喧嘩になった場面が頭の中で繰り返されていた。

「なんでお前っていつも俺の気持ちが分からないの?」
「本当に、お前じゃなかったらこんな思いしなくて済むんだけどな」

もう何度も言われた言葉。
こんなに傷つく言葉を言われても、彼が時折見せる優しさや、二人で過ごした幸せな思い出を思い出すと
「自分がもっと努力すればいい」
「彼の気持ちをちゃんと理解できれば、きっとまた元のように愛してくれるはず」

と美奈は陸の言うことを信じてしまっていた。
そしていつからか美奈は、陸と一緒にいると自分がダメな人間に思えてくるようになっていた。何度も自分を変えようとしたけれど、うまくいかない。
会社でも同僚に意見を言うことが怖くなってきたし、友達とも距離を置くようになっていた。
陸に愛される自分でいたいという気持ちが、いつの間にか美奈を押しつぶしていた。

「お前みたいな女を相手にしてやってるんだから、少しは感謝しろよ」

陸の言葉が心に刺さるたびに、美奈は自分がどんどん小さく、価値のない人間に思えてくる。
鏡の中の自分を見ても、自信を失い、くすんで見える気がして、昔のように笑顔を見せることさえ難しくなっていた。

「美奈さん、大丈夫?」

その声に、はっとして顔を上げると、そこには藤堂課長が立っていた。
美奈の会社の御曹司であり、今は美奈の課の課長として働いている。
社長の息子である藤堂課長は端正な顔で堂々としていて眩しく近寄りがたい。だが、いつも美奈や部下と話すときは、こちらに歩み寄ってくれ謙虚で優しい。
最近では藤堂課長が近くにいるだけで、張り詰めていた美奈の心が少し和らぐように感じることさえあった。

「…あ、はい、大丈夫です」
涙を隠すよう思わずうつむいたが、藤堂課長はその様子を見逃さず、静かに声をかけてくれた。

「今日の帰り、よかったら食事にでも行かないか?」

藤堂課長が優しい声で美奈に囁いた。
美奈の胸が温かくなるのを感じた。藤堂課長に話を聞いてもらえたらどんなに楽だろう…そんな考えが頭をよぎるが、それを口に出す勇気はまだなかった。

藤堂課長の提案を受け入れるか迷っていると藤堂課長は

「じゃあまた帰り会社の前で」

と言い残し自分の席へと戻っていった。
行かざるを得なくなってしまった…
美奈は少し楽しみな気持ちと藤堂課長にもしも嫌われたら…と不安な気持ちで揺れていた。

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