終電を逃してしまったので… (Page 2)
「悪くないな、部屋も綺麗だし。飯もそこそこ」
「宿泊でうどんかそばサービスとは最近はいろいろですね」
お腹が空いていたので、ルームサービスのご飯を注文した。宿泊に限りうどんかそばが無料だというので、私はうどんにした。比較対象があるみたいな言い方をしてしまったが、何も言わなかった。気にしてないんだろう。
そういえば、藤井課長は彼女とかいるんだろうか。30代前半で、独身。社内でも社外でも人気だって聞いたけれど、浮いた話聞かないしなぁ。社長のお嬢さんとお見合いしたって聞いたけど、お嬢さんには恋人がいるらしくフラれてしまったと笑っていた。
「シャワー浴びてきたら?」
「え、あ、はい」
あっさりそう言われて、とっさに頷いてしまった。あんまりナチュラルに言うから虚を突かれた。本当に何でもないことなのかな…。そんなことを思うとなんだかもやっとした。
*****
後は寝るだけの段階になって、エレベーター内では決着がつかなかった押し問答の堂々巡りをまた何回か繰り返した。途中で私も課長も面倒になり、もうベッド大きいからいっかとベッドで寝ることになった。
課長に背中を向ける形で寝転んでいるけれど、なんだか寝付けない。課長はもう寝てるっぽいけどなぁ。なかなか眠気が来ず、身じろぎする。少し、寝返りを打っても平気なベッド。バスローブの袖を引かれ、課長の方を向くと耳に唇が触れ
「眠れない?」
と囁かれた。びっくりして、慌てて体を離す。目を擦る課長が時計を確認していた。
「すみません、起こしました?」
「いや、俺も寝付けなくて。やっぱり俺が隣とか気になるよな。なんなら今からソファーに」
そう言って起き上がった課長のバスローブの袖をぎゅっとつかむ。驚いたようにこちらを見た課長は何も言わない。何を言えばいいかもわからないまま、課長の顔を見上げる。頬に掛かる髪をそっと耳に掛けられた。
「そんなことすると良いようにとるよ」
バスローブを握っていた手をそっと外され、指が絡められる。ぎゅっと握られてただでさえうるさい心臓がひときわ強く鼓動を打つ。
触れるだけのキスの後抵抗しない私を見てキスが一気に深くなった。最初の遠慮がちな触れるだけのものとはちがい、いっそ情熱的なまでの深いキスにくらりとめまいがする。酸欠に薄く開けた唇から舌が入り込み、驚きに縮こまった舌を絡め取られる。歯列をなぞられ、ぺろりと唇を舐められる。
キスの途中からぼんやりとしてきて、放心したように課長の顔を見上げた。
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