海の家でのバイトでひと夏の恋 (Page 4)
「いい?」
私は深く頷いた。
「絶対に後悔しない?ここまでしてあれだけど」
「後悔なんて絶対にしないよ」
まだ何か言いたげな口をふさぐ。指を絡めて手を握られ、固いそれがゆっくりと入り口をこじ開けて体を押し開いていく。初めてではないけれど、久しぶりに受け入れたからか少し鈍い痛みが走った。それは一瞬のことで、待ちわびたモノにナカは喜んできゅんきゅんと締まる。離さないとのごとく吸い付いて離さない。
「やばっ、蛸壺なんて聞いてないけど…」
「え?なに…」
「良すぎて最高ってこと」
片脚を高く持ち上げられ、ゆっくり動かれる。指で擦られたいいところを擦られぞくっと快感が走り抜ける。大きい仕掛け花火をし始めたのか、火薬の匂いが強くなった。その花火の音に肌がぶつかる音も消えていく。
激しくなる律動に、ぎゅうっと抱きつくことしかできない。お互いの熱を帯びたと息が混じり合う。絶頂の感覚が膨れ上がる。
「も、イッちゃうっ…」
「ん、俺も」
キスをされてぐっと一際奥を突かれ、瞼の裏が白くスパークした。体を貫く絶頂感。イクと同時にきゅうっとひときわ強くナカが締まった。それとほぼ同時位に短く息を吐くことが聞こえ。小さな打ち上げ花火が一瞬咲いてはかなく散るのが目の端に見えた。それが夏もこの恋も終わりのような気がして、私は抱きついたままだった腕に少し力を入れた。
*****
もう会うこともないと思われたが、民宿からの最寄り駅で三崎さんに声掛けられた。知らなかった、路線だなんて。
「電車こっち?」
「三崎さんも?」
「そう。航でいいよ。俺もひなたって呼ぶし」
美琴ちゃんと玲華さんが反対側のホームで手を振っているのが見えて私も手を振り返す。
「大学の休みって9月まででしょ。また会わない?どっかデート行こ」
「え、あ、うん。いいけど」
向こう側のホームに電車が滑り込む。とんと昨日つけられた跡のあたりに指を当てられた。
「これ消える前に、また会おうね。次は1個じゃなくてもっと沢山、キスもいっぱいしたいし、かわいい声聞きたいな」
そう耳打ちされて。赤くなった顔がやってきた電車の窓ガラスに映りこむ。
夏はもう終わったような気がしていたが、続いていたらしい。これから先まだまだ暑さも熱もおさまらないようだ。
Fin.
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