海の家でのバイトでひと夏の恋 (Page 2)
時々賄いを食べる時間が重なって話したりするけど、結局告白は出来ないまま気が付けば今日が最終日。明日の午前中には家に帰るつもりでいる。てか、バイト終わったら即帰って来いと言われている。心配してくれているのはわかるが、20を超えた娘相手にちょっと過保護すぎではないだろうか。だから、実質告白するとしたら今日が最後のタイミングだ。
今日で最終日だからと早めに店じまいして、夕暮れの海で皆はしゃいでいる。私たちも民宿で水着に着替えて、少し泳いでいた。海の家の電気がついてるのが見えて、店の方に行くと三崎さんが床をじっと見ていた。
「三崎さん、何してるんですか?皆水着に着替えて海で遊んでますよ」
「いや、ピアス落として…。お気に入りなんで、凹む。昼まではあったんで絶対どっかに落ちてると思うんすけど」
「手伝うよ。2人で探した方が効率いいし」
床には落ちてないので、2人で畳になっているところを調べる。畳を撫でながら探していると、かつんと指先に金属が当たった。
「もしかして、これじゃない?」
「これっす、良かった」
ほっとした顔をしている三崎さん。ピアスを拾い上げて耳に通すのをじっと見ていると不思議そうな顔された。
「ピアスなんて珍しくないでしょ?」
「私ピアスあいてないから。正確にはあいてたんだけど、合わなくて。もう塞がっちゃった」
大学入学と同時に皮膚科であけてもらった。本当はピアッサーであけようとしてたんだけれど、母に見つかり自己流でやるくらいなら病院行きなさい!と怒られた。かかりつけの皮膚科行ったら丁寧に開けてくれて痛くなかったけど、肝心のピアスが合わなかった。
「本当だ、うっすら跡が」
急に耳を触られて変な声が出た。慌てて口をふさぐ。一拍遅れて顔に熱が集まる。お互い何も言わなかった。耳に触れていた手が頬に移る。目を合わせるより唇が触れた方が早かった。
*****
薄暗くなってきて誰かが花火行こうと言い出し、人が減ったタイミングで砂浜からは見えない岩陰に手を引かれる。時々足元をさざ波が撫でた。さっきよりずっと深いキスにめまいがしそうだった。それが足元を不安にさせて私は首に腕を絡ませぎゅっとしがみついた。
少し背伸びしてずっと着てみたかったセパレートタイプの水着の上から胸を撫でられる。
「あっ!」
「しーっ。ここ砂浜から見えないけど、声は聞こえちゃうかも。だから、声押さえて。出来る?」
こくりと私は頷く。そうだった、10m~15m位離れてるところに皆いる。
いないのに気が付いていたとしても、花火買いに行ってそのまま民宿帰ったか、ゆっくり帰ってるぐらいにしか思ってないだろう。まさか近くの岩陰でこんなことしてるなんて思わない。
片手で首元の紐をほどいて緩くなった水着の隙間から日に焼けた手が入り込んだ。
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