失恋した私を遊び人と噂されている先輩が優しいエッチで慰めてくれて…

・作

同僚を好きになって早2年、今日こそ告白すると息巻いていた私。ところが、告白する前に彼に彼女ができたことがわかってしまい…。傷心の帰り道、私を呼び止めたのは遊び人と噂されている先輩で。優しいエッチで慰められて彼のことも忘れそう。

 同期入社で同じ部署の柳川を好きになってから早2年。同期が集まる飲み会で、私は今夜こそ柳川に告白してみせると一人緊張していた。
 
 「大丈夫、メイクも髪もばっちり。あとは飲み会が終わってから、柳川を誘って二人で抜け出すだけ」
 
 綺麗に巻いた髪を整え直して、居酒屋のお手洗いの鏡に映る自分に言い聞かせる。
 
 私は普段、髪はほとんど巻かない。そんな私が髪を巻くのは、決まって勝負事があるときだった。外見を綺麗に整えることで気合いが入るというのもあるけど、願掛けみたいな側面もあった。髪を1カールするごとに、大丈夫、絶対上手くいく、そう自分に言い聞かせた。
 
 「大丈夫?具合悪い?」
 
 お手洗いに長居していたつもりはなかったけど、席に戻った私は向かいの柳川に声をかけられた。
 
 多分柳川は私の気持ちには1ミリも気づいていない。柳川は底抜けに明るくて優しい。でもそれは私にだけじゃなくて、太陽みたいに周りの人たちを平等に照らす。そういうところが好きで、同時に少し寂しい。
 
 「ううん、平気。ありがとう」
 
 柳川の気遣いに笑顔で返す。
 
 「そう言えば、今日髪巻いてるんだね。可愛い」
 
 私が笑顔の裏で、彼の何気ない一言にうるさくなる心臓を抑え込もうと必死になっていると、その隣から同じく同期の市橋が話しかけてくる。私はその言葉に耳を疑うことになる。
 
 「誰にでも優しいのはお前のいいとこだけど、度が過ぎると彼女が心配しないか?」
 「えっ」
 
 柳川に彼女…?
 
 驚く私を見て、市橋は不思議そうにする。
 
 「あれ?柏木に言ってなかったの、お前」
 「まだお前にしか言ってなかったんだよ!付き合い始めたばっかりだし…」
 
 柳川が掻いた頬が赤いのは、お酒のせいだけではないのが明白だった。
 
 そうして、私は自分の気持ちを伝える前に2年想い続けた相手に失恋した。
 

*****

 
 それからのことははっきりとは覚えていない。飲み会が終わり、皆は二次会に行ったようで、気づけば私は繁華街をふらふらと歩いていた。
 
 「柏木さん?」
 
 どこかで聞いたような男性の声に呼び止められて振り向くと、桐島先輩だった。桐島先輩は、私と部署は違うけど、新人研修の時にお世話になった。物腰が柔らかくて紳士的。でも社内外で遊びまくっていると専らの噂だった。
 
 確かに。改めて見ても顔よし声よしスタイルよし、おまけに仕事もちゃんとできる。これでモテない訳がない。
 
 実際、先輩の腕には美女が絡まっていて、そんな女に構うなと言わんばかりに、先輩を不機嫌そうに見上げている。先輩はごめんと一言、その美女の腕を振り解いてこちらに向かってくる。置いてけぼりの美女は私を睨んで、人混みの中へ消えて行った。
 
 「なんかあったの?」
 「別に…」
 「別にって顔してないよ。まだ時間ある?ちょっと付き合ってくれない?」
 
 一人でいるより誰かといたい夜だった。私は先輩の言葉に頷いて、どこか近くのバーにでも連れて行ってもらえるんだろうと、俯いて彼の隣を歩いた。
 

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