奥手な彼に火を付けたら、蕩けるぐらい愛されて… (Page 2)

 
 ノブに手をかけたまま固まっている眞に声をかける。
 
 「いつ終わるかわかんないし、家寄ってく?」
 
 私の家は大学からそう遠くなかった。家でお茶でもして、鍵は後で取りに来ればいい。
 
 「お邪魔します…」
 
 振り返った眞は薄っすら顔を赤らめていて、告白された日のことをちょっと思い出した。
 

*****

 
 テーブルの上にグラスが二つ。私のグラスは汗を掻くばかりでほとんど減っていない。眞のグラスは注がれた3杯目がもうすぐでなくなりそう。眞はついさっきの出来事がまだ気まずいのか、落ち着かない様子でぐびぐびお茶を飲んでいる。
 
 「眞は、」
 
 急に名前を呼ばれたことにか、隣のクッションに座る眞が驚いた気配がする。
 
 「私とああいうことしたいって思わない?」
 「えっ」
 
 眞は私の言葉に驚いている。けど、私も驚いている。今までずっと聞きたくても聞けなかったことが、するりと唇から出て行った。あの衝撃に当てられたとしか言いようがない。
 
 「私とはそういうの考えられないかな」
 「そういうのって…」
 
 眞の胡座をかいた膝に手を乗せて顔を近づける。目を伏せて唇を重ねた。
 
 「この、先のこと」
 
 ぼやけるくらいに至近距離の眞の瞳が鈍く光った。今まで眞がコートに立っているときにしか見たことがなかった瞳の色にゾクゾクする。
 
 「したい」
 
 眞の言葉に頷く代わりに、私はもう一度キスをした。
 

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