奥手な彼に火を付けたら、蕩けるぐらい愛されて…

・作

私には付き合って三ヶ月になる彼氏がいる。優しい彼とはラブラブで順風満帆。この三ヶ月、キスより先のことを一切していないのを除いては。私に性的魅力を感じていないとか?そんなとき、部室で誰かがエッチしているのを二人で聞いてしまい…!?

 私、沖田みのりはここ一ヶ月近く、あることで悩んでいる。
 
 「お疲れ!着替えて来るから待ってて!」
 
 大学の体育館。出入り口に立つ私を見かけて走り寄ってそう言い残し、部室へ消えて行ったのは彼氏の深川眞。
 
 眞は明るく爽やかで、小学生のころからやっているというバスケを大学でも続けている努力家。いつも周りに人がいて、背の高い彼はその中で一人、頭が飛び出ている。
 
 共通の友人をきっかけに仲良くなってしばらく、人気者の彼から告白されたとき、一番初めに感じたのは驚きだった。私は小柄でスポーツとも無縁だし、どちらかと言えば物静かなほうだったから。
 
 ただ、薄っすらと頬を染めた目の前の彼を見る内、じわじわと嬉しさや愛おしさが込み上げてきて。私たちは恋人になった。私は優しく前向きな彼のことをどんどん好きになり、彼との関係は傍から見ても順風満帆。
 
 でも、大好きな眞は同時に、最近の私の悩みのタネでもあった。私たちは付き合って三ヶ月、キスより先のことはしていない。いつも遠慮がちに重ねられる唇をもっと追いかけたくても、もし眞にその気がなかったら?と思うと、彼の服の裾や袖をきゅっと握り締めることしかできなかった。
 
 「ごめん、お待たせ」
 「お疲れさま。全然待ってないよ」
 
 眞は私が何も言わなくても手を繋いでくれて、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
 
 正門に差し掛かったところで、急に眞が立ち止まった。
 
 「家の鍵ロッカーに忘れてきた。取ってくるから待ってて」
 「一緒に行くよ」
 
 私は申し訳無さそうにする眞に着いて行くことにした。繋がれた手を離したくなくて。
 
 部室棟内は明かりが点いているものの、誰も残っていないのか随分静かだった。
 
 私は窓ガラスにぼんやり映る自分たちの姿を見てはっとした。私たちは身長だけで言えば、カップルというより親子みたいだったから。
 
 眞もそう思ってるのかな…?
 
 告白したはいいけど、実のところ私に性的魅力を感じなくて、キスより先のことをする気にならないとか。
 
 「まだ開いてるといいけど…」
 
 悶々と考えていたところ、眞の声ではっとさせられた。眞の大きな手がドアノブにかけられて、回そうとしたとき。
 
 「―――っ、ぁ…ン」
 
 ドアの向こうから、鼻にかかった甲高い女性の声とガタガタと何かが揺れるような音が聞こえてきた。中で何が行われているか察してしまった私たちは、その場に立ち尽くしてしまう。
 
 同時に私は心の中で、顔も知らないその女性を少し羨ましいと思っていた。
 

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