秘密の恋人と甘い時間

・作

恋人はいるが周囲にはそれを知らせたくない藍。それにはとある理由があった。そんな恋人と、しばらくぶりに会うことになった藍。緊張しながらも楽しみに自分の部屋の扉を開けると、そこには藍を出迎えてくれる恋人の姿があった。

私にはお付き合いをしている人がいる。

けれど他のどんな人にもそのことは言っていない。

言ってはいけない。

だから、

「藍さんは気になってる男の人とかいないんですかぁ?」

同僚や友人のこういった問いかけが苦手だ。

本当は相手のことを自慢したい気持ちでいっぱいだけど、それをしたら私たちはきっと変な目で見られるに決まっているからだ。

だから私は毎回曖昧に笑って、今はいないです、と答えるしかない。

それにしても、今回は会えない期間がいつもより長くて、私は軽く恋人ロスに陥っていた。

仕事が忙しい時期で、仕方がないのはわかっている。

それは相手も同じで、私と休みがなかなか被らないのだ。

たまの休みに、一人で自分を慰めてもむなしいだけだった。

早く会いたい。

その気持ちは日に日に募っていく。

ようやく私たちの予定が合ったのは、前回会ってから二ヵ月半経ってからだった。

普通の休みに加え、私が有給を取ると言うと相手も一緒に取ってくれた。

一緒にいられる時間が増える。

私はその時を心待ちにしていた。

そしてようやく、本当にようやくその日になって、私は仕事を早々に片付けると、定時で上がる。

いつもどちらかの家に行くのだが、今回は私の家の番だ。

私は帰りの電車の中で、今から帰るとメッセージを送る。

するとすぐに、もう家に着いてるよ、と返事が来た。

合い鍵を渡しているからきっともう中に入っているのだろう。

久しぶりだから、すごくどきどきする。

昨日ちゃんと片付けたから、大丈夫なはず。

そう思いながら、私は家路を急ぐ。

いつもはあまり苦に感じない家までの道のりが長くて、じりじりと胸を焦がされている気分だった。

ようやく自分のマンションに着いて、階段を急ぎ足で上る。

部屋の前に着いて、一つ深呼吸をして息を整える。

鍵をさして、回す。

扉を開けると、

「おかえりなさい!」

弾んだ声で出迎えてくれたのは、私の世界一大事な人。

「ただいま、なっちゃん」

笑顔が可愛い、私の彼女だ。

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