子犬系男子が残業続きで臭ってきたから、シャワーを貸してあげたら、懐いちゃった話

・作

新人研修中の佐々木くんは最近残業続きだ。会社の仮眠室はシャワーが付いていないため隣の席にいる彼の匂いに気づく私。「シャワー貸してあげる」親切心で言ってあげたものの、お家での彼の可愛さについつい甘やかし過ぎて…

なんか、ちょっと匂いが気になるな…

最近社内で寝起きしている社員がいるらしいことは知っていた。

だけど、私の横でさっきから必死にタイピングして、クマまで作っている年下の社員くんが家に帰れていないなんて、今の今まで気づかなかった。

「佐々木くん、ちょっといいかな?」

「あ…はい。何か間違いでもありましたか?」

不安そうに後ろを付いてくる後輩くんを、みんなの目をかいくぐって、会議室に連れこんだ。

「佐々木くん、もしかして、残業して家帰ってないでしょ?」

「…どうしても、仕事が終わらなくて。仮眠室に2泊しました」

「2泊も?残業なんて、佐々木くんの教育係って誰だっけ?」

確かにこの会社には仮眠室があるけど、もう最近はベテラン社員がたまに使うくらいになっていて、新人くんは仮眠室の存在さえ知らないもんだと思っていた。

「伊藤さんです。でも、課長がインフルエンザで休んでるので伊藤さんが代わりに出張に行ってて…」

「ごめんね!フォローするべきだったわ。早く言ってくれたら良かったのに…って言いづらいよね」

「みんな忙しそうだし…それに、仕事に慣れるまではこんなもんなのかなって思ったんで」

「今、令和だよ?そんな働き方ダメに決まってるでしょ」

私は言いながら、隣の席にいながら気を配れなかったことを後悔していた。

「今日は、帰れるの?」

「実は…今日締切の仕事があって、多分残業です」

佐々木くんは期待の新人くんというだけあって、上司たちからいろんな仕事が回ってくる。

こんなことならもう少し早めにフォローするべきだった。

「じゃあ、私今日はわりと手が空いてるから、手伝う。それで一緒に定時でかえろう!」

結局なんとか仕事が片付いたのは、やはり終電間近の深夜だった。

「今から、ダッシュすれば終電間に合いますね!」

「待って、佐々木くん。あと5分しかなくない?」

2人で顔を見合わせ、佐々木くんがぷっと吹き出した。

「本当だ、距離感バグってました(笑)でも…明日はお休みですし、また仮眠室に泊まって始発で帰ります。先輩の家、会社から近いんですよね?」

「そう。よく知ってるね」

「はい、新人歓迎会の時聞いて、羨ましいなっていつも思ってました」

「そうだ、うちのシャワー借そうか?」

「え?先輩の家の…ですか?」

「あ、そんな、深い意味はないの。ここの仮眠室ってシャワーついてないでしょ?」

「俺…そんなに臭いますか?」

返事に躊躇した。

そもそも、佐々木くんの異変に気づいたのは彼の匂いが気になったからだ。

「うん。男の人の匂いって感じしてる…でも、クサいとかじゃ無いよ、なんか…」

「ん?…何ですか?」

「ううん…なんでもない。じゃ、そうと決まったら、行こ!」

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