離れた道が再び交わるとき
長く付き合っていた恋人、五十嵐透真と別れて5年が経つ遠山葉月は、ある時母親から透真が地元に戻ってきていると聞く。感情が消えたのではなく、就職先の意見が合わずに別れたのでそれとなく気持ちを引きずっていた葉月。思いがけず再会した二人は、話しているうちに感情が昂りはじめ…。
『透真くん、帰ってきたんだって』
仕事が終わったタイミングで届いた、母からのメッセージ。
そこに書かれていたのは、私―遠山葉月―が5年前に別れた恋人の名前だった。
五十嵐透真。昔からの幼馴染で、親友で、愛していた人。
小学校から大学までずっと一緒で、きっとこれからも一緒なんだろうなと思っていたけど、就職を機に私たちは別々の道を歩むことになった。
透真は都心部へ、私は地元の町へ。
就職先の希望は、お互いにどうしても譲れなかった。
それならばいっそのこと、とさようならをするのは案外苦ではなかった。
でも、そう思い込んでいるだけなのかもしれない。
透真と別れてから、私は毎日が退屈だった。
大好きな故郷で働けるのは嬉しかったし、何も不満はないけれど、どこか物足りなかった。
どうやって満たせばいいのかわからないまま、こんなに年月が経ってしまった。
「でも、なんで…」
突然のことに心が落ち着かないまま、母への返事を打ち込む。
何度も打ち込んでは消し、幾度となく直したものだったけれど、どうしてもつんけんとした返事になってしまった。
母も透真の話題はそれ以上出さず、帰りに買ってきてほしいものを言ってきた。
正直、ほっとした。そう、元彼の話題なんて出されても、何もいうことはないのだ。
スーパーに寄り、母からのおつかいを済ませて、さっさと帰ろう。
そうしたかったのに、スーパーに入った瞬間、私の時は止まってしまったようだった。
「あ…」
お互いに顔を合わせて、全く同じタイミングで声を出した。
噂をすればなんとやら、だろうか。こんなところで透真と出会うなんて、思ってもみなかった。
いや、この町に帰ってきたんだから、今日でなくても出会う可能性はいくらでもあった。
そんなことはどうでもいい。私はどうすればいい? 何を言えばいい?
ぐるぐると思考が渦巻いていると、透真は困ったように微笑みながら、訊ねてきた。
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