かっこよくなった後輩との突然の再会。友情を取り戻したと勘違いした私が酔って隙だらけになりとった行動に、彼は我慢できなくなって…
高校の頃、弟みたいに可愛がっていた後輩男子。再会した彼は長身でかっこよく成長していた。卒業式に告白されて彼をふった過去のある主人公。昔みたいにまた仲良くなりたいと密かに思っていた。あることがきっかけで部屋へ通うようになった彼とまったり週末を過ごしているうちに、酔った隙だらけの主人公に彼は我慢できなくなる。
『ひな?』
大学のキャンパスをコンビニの袋を下げてぼーっと歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「な、なんで芳人が!?」
『俺、ここの3年』
2コ年下の芳人は高校生のとき、私に懐いていた後輩だった。
年下のくせに「ひな!」って呼び捨てして、どこにいてもすぐに駆け寄ってくるのが可愛いかった。
女子の私と同じくらいの身長で華奢な芳人はみんなから可愛がられる存在で、いわゆる子犬系男子だった。
「一緒の大学だなんて、全然気づかなかった!」
『俺もびっくりした!ひな。その格好、似合ってるね』
人懐っこい笑顔は変わらない。
同じ大学のキャンパスで今まですれ違わなかったのも無理はない。
私は大学院の研究室で毎日研究室にこもっているのだった。
薬品くさい白衣と無造作にまとめた髪を彼は面白そうに指差した。
芳人は会わない間に私の身長を追い抜いていて、私を見下ろしている顔は無邪気だけれど、違う人みたいだ。
動揺を隠すように、私は愛想笑いで返した。
「もう、ばかにしてるでしょ?ごめん、私、研究室に戻らなきゃいけないの。じゃあね!」
女らしさを一ミリも感じさせない自分の姿をこれ以上見られたくなくて、話を切り上げてしまう。
彼の少し大人びた姿にドキドキして、懐かしい気持ちもよみがえった。
だけど、きっともうあの頃のようには、戻れないんだな。
ふとそんな寂しさを感じながら研究室へと急いだ。
*****
「今日も日が暮れちゃった」
いつものように遅い時間に研究所を出て、家路についた。
一人暮らしの部屋は先輩から譲り受けた安アパートで、大学から近いというだけで決めた部屋だった。
いつものようにコンビニに寄ってから帰宅すると、ドアの前に誰かが立っていることに気づく。
私を訪ねてくる人なんてまるで思い当たらない。
恐る恐る近づくと、顔を上げたその人は無邪気な笑顔をこちらに向けた。
『ひな、おかえり!』
どうして芳人がここに?という疑問はあったが、昔の彼のことを思い出せば不思議でもなんでもないことだった。
男女問わず交友関係の広い彼にとっては、私の棲家を誰かに聞き出すことなんて容易いのだろう。
「ただいま」
こうして、芳人は私の部屋にたびたび来るようになった。
*****
今日は週末、明日はお休みで大学に行かなくていい。
こんな日は夕食といっしょに少しお酒も飲んで、いい気分だった。
ゆっくりお風呂に入っていた私は、まだくつろいでいる芳人に聞いた。
「ねぇ。もうそろそろ帰ったら?」
『えー?明日休みだよ?ひなは俺に帰って欲しいの?』
テレビの前でゴロゴロしていた芳人は急に不機嫌になってこっちを睨んだ。
いつもなら私がお風呂に入ってる間に勝手に帰ってるくせに。
そう思って芳人を見ると、大きめのクッションを胸に抱いて拗ねてるその姿が可愛らしくて、笑ってしまう。
「あはは。身長は大人になったけど、ほんとワンコみたい。飼い主の私に怒ってるのか〜な?」
ふざけて頭をヨシヨシしようとした手を、触れる寸前でパシッとつかまれる。
バランスを崩した私は前のめりになった。
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