同級生からの誘惑 (Page 5)
え? 入ってくる?
ドキドキしていた美咲の傍に、そっと入ってきた幸太。
バスタブの中で密着すると、さっきとは違うドキドキ感が伝わってきて美咲はどうしたらいいのか分からなくなった。
ギュッと肩をすくませている美咲を幸太が優しく抱き寄せた。
抱き寄せられると、逞しい幸太の体がさっきよりも優しく感じた美咲は、離れたくないと思った。
「あのさ、さっきワンナイトって言われたけど。それじゃだめそうなんだ」
「え? 」
「美咲がいないと、僕きっと生きてゆけないから」
はぁ?
驚いた顔で黙っている美咲に、幸太が真剣な眼差しで見つめてきた。
「ずっと探している人がやっと見つかったのに。このまま会えなくなるなんて、絶対嫌だ」
「どうゆう事? 」
驚いた目をして幸太を見つめている美咲。
そんな美咲を見ていると、幸太の目が潤んできた。
「その目はずっと変わらないままなんだね。突然いなくなったあの日から、ずっと探していたよ。忘れる事なんて、できなかったから」
「意味わかんない…なに、それ」
「じゃあ、これからゆっくりと意味わからせてあげるから。ずっと一緒にいて」
すっと一緒にいてって…。
驚いたまま幸太を見ている美咲は、初めの時の怪しい雰囲気とは違う、まだどこか少女のような目をしていた。
そんな美咲に幸太は。
「あまりにも綺麗になりすぎてて、初めは分からなかった。ごめんね…愛良ちゃん」
愛良と呼ばれると美咲の目が潤んできた。
「…どうして? 顔…違うのに…」
「僕は愛した人の顔なんて気にしていない。信じるのは、僕のハートだけ。駅前で見かけた時、僕のハートが教えてくれたんだ。あの子はきっと愛良ちゃんだって」
「…私も同じだった。あの人は幸太君だって…思って…」
「そっか。じゃあ、僕たち相思相愛なんだね。嬉しいなぁ」
美咲は何も言えなくなった。
何も言えなくなった美咲を抱き寄せて、そっと唇にキスをした。
激しいキスを繰り返す幸太を美咲は素直に受け止めていた。
お湯の中で触れ合うのは、また一段と興奮が増す。
実はこの二人は小学校の同級生だったが、美咲は訳があり名前を愛良から美咲へ改名して顔を整形した。
偶然見かけた幸太に気づいてわざとぶつかって一夜の関係でいいと近づいたつもりだった美咲だったが、幸太も何となく美咲に惹かれてしまいわざとぶつかった。
幸太は美咲と関係を持つと同級生でずっと愛していた愛良であると確信が持てたのだ。
過去の事なんてまたゆっくり話せばいいと、幸太も美咲も思った。
16年越しの同級生からの誘惑は最高の恋の始まりだ。
Fin.
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