宇宙船で愛のエチュード。切なく燃え上がる今日限りの情事は激しく甘く…

・作

大学のサークル仲間である紫穂、翼、亜希、響生の4人は、懸賞で当たった宇宙旅行のモニターに参加していた。しかし、酸素供給装置のトラブルにより、ひとりが犠牲にならないと他の3人も生還できないという状況になってしまい、苦渋の決断を迫られ、残された時間を惜しむ4人は…。

「あっ、流れ星」

窓の外を眺めながら、亜希が妙にはしゃいで言った。

「えっどこどこ?」

亜希が見ている方向に視線を向ける。

「もお、紫穂ってば、とろいんだから。反応遅すぎ」

今日の亜希は、意地悪モードか。

「こんだけ星が見えてたら、またすぐ見られるよ。ね、紫穂」

翼がフォローしてくれた。

「ちょっと翼のシャツ可愛くない?」

星座柄のアロハシャツはいい感じにこなれている。

「へへ、いいだろ、ビンテージだよ」

翼は、おしゃれをこじらせた古着好きで、顔はキリッとしているのに、性格はのほほんとしていて、場を和ませるムードメーカーでもある。

それでいて、サークル活動では、確実に頭ひとつ抜けた天才っぷりを発揮していて、一旦活動に入ると、半端でない集中力を発揮する。

「それにしてもさ、俺たちラッキーだよな。宇宙旅行のモニターが懸賞で当たっちゃうなんてさ。しかもちょうど定員4人のツアーだし」

響生が、さりげなく話題を変えてくれた。

翼と響生と亜希と私は大学のサークル仲間で、1年の時に知り合い、去年ぐらいからなんとなくサークルの主要メンバーという感じになり、4人で行動することが多くなった。

あと半年ほどで卒業だと思うと寂しいけど、活動の総仕上げに向けて、まだまだ頑張らないと。

響生は、思慮深く落ち着いていて、私たち4人の中ではリーダー役で、情緒不安定気味の亜希を落ち着かせるのが上手い。

「しかも宇宙飛行士がリモートで操縦してるとか。すごくね?」

亜希は儚げな雰囲気の美人で、響生も翼もおそらく亜希のことが好きだ。

ふたりともいい奴すぎて、抜け駆けしようとしないし、私にも気を使ってくれているので、4人の仲はうまくいっている。

「え? ちょ…うそっ…嘘…だよな。ちょっと、これ見てくれよ。緊急事態発生だって」

翼の視線の先には、フラットスクリーンのテレビのようなモニターがあり、私もそれをちらりと一瞥した。

「え?酸素供給装置が故障して、あと24時間で酸素の供給が断たれるって、どういうこと?ちょっと冗談でしょ…ひどい…私たち、死んじゃうの?」

亜希が、パニックを起こしかけている。

「でも、出発してから大体丸一日だから、このまま引き返せば無事帰れるんじゃない?」

「…いや、24時間以上経ってるだろ、紫穂。衛星携帯で催行会社に連絡取ってみるか」

響生がスマホを手に取る。

「…え?…そんな…それはあり得ません。どうにかしてくださいよ。俺たちには、四人揃って生還するって選択肢しかありません。どうしてくれるんですか、もういい加減にしてください!」

響生がソファにスマホを投げ、突っ伏して号泣する。

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