今日はもうシません!
ごく普通のカップル、榎田真理と小野康孝は週末に康孝の家に泊まるのが決まりとなっていた。だが康孝の絶倫ぶりに真理は毎回翻弄されるばかり。今回もまだシたいという康孝だったが、真理は「今日はもうシない」と寝ようとする
「今日はもうシません!」
ごく普通のカップル、榎田真理と小野康孝。
しいて言えば、7歳差というほんの少しの年齢差がある程度の、普通のカップルだ。
「どうして?」
康孝がわずかにムスっとした。
真理は康孝のこの、言葉には出さないが顔で機嫌が悪いというのを表すのが苦手であった。
元々同じ部署に勤めていた真理と康孝。
新人と教育係という関係だった二人はお互いに惹かれ合い、どちらから言うこともなく恋人関係をスタートさせた。
年上の康孝があらゆることをリードし、真理はそれについていくのが基本だった。
もちろん、情事の時もそうだった。
「どうしても何も、昨日だっていっぱいシたじゃないですか!」
真理はベッドの上で毛布を引き寄せ、身体を隠す。
週末に合わせて康孝の家に泊まるのが決まりになっているのだが、その度に真理は康孝にかなりの回数抱かれる。
昨夜も真理は五回ほど抱かれていた。
今も二回目を終え、さあ次だと康孝がスキンを手に取ったところで真理が今日はもうシないと言ったのだった。
「確かにシたが……」
「今日はもう寝ましょうよ~明日は天気もいいみたいですし、お出かけしたいじゃないですか」
「そうだが、真理」
「ダメで~す!私の身体が持たないので寝ま~す!」
そう言った真理は、ぼすんとベッドへ倒れ込む。
柔らかな羽毛の毛布に包まり、真理はすぐに目を瞑った。
その隣へ康孝は横になり、毛布の上から真理を抱きしめる。
「君の身体のことを考えていないのはすまなかった。でも、その、足りない」
「……小野さんてとっても元気ですよね。私、男性経験なかったんですがそれって普通なんですか」
「普通かどうかと聞かれてもわからないが……」
真理を抱きしめる康孝の腕に力が入る。
「君への気持ちが……全然、止まらなくて……」
言葉がどんどん尻すぼみしていく康孝がどうにも可愛いと思ってしまった真理は、クスクスと笑い出した。
普段の仕事の時はとても厳しい上司である康孝。
そんな康孝が、照れくさそうに言うのがとても可愛らしかった。
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