復讐は目の前でするもの…

・作

旦那の友樹は暴力は振るうは、浮気はするはで最悪な人だった。子供がいるために我慢する一華だったが、友樹の後輩である颯真さんに密かに恋心を抱いていた。そんなある日、颯真さんのいる前で暴力を振るわれた一華…。それを見た颯真さんは我慢できずに…。

「お前、うるさいんだよ!俺がどこで誰と飲もうが関係ないだろ!」

「友樹さん!それはダメですって!!」

ガチャーン!

深夜1時に、リビングに響き渡るガラスが割れる派手な音…。
おまけにうるさい怒鳴り声のせいで、もしかしたらご近所さんから通報されるかもしれない。

でも、“心配”はしていない。
この悪魔のような人をどこかへ連れていってくれるのなら通報は大歓迎…。

頭をさすりながら、床に座り込む私は、取っ組み合う2人の男性を見つめた。

小柄で少しぽっちゃりした男の上に長身の男性が乗っかり、その手を押さえつけている。

そう…組み伏せられているのは私の旦那である友樹。
そして、そんな暴れる友樹を押さえてるのは、友樹の高校時代の後輩である颯真さん。

どうしてこうなったのかというと、始まりは私から旦那に問いかけた、ある一言がきっかけだった…。

週末に、うちの家に颯真さんを呼んで飲み会を開くことはよくあり、今日も何も変わらずいつものように飲んでいた。

上機嫌で何杯もビールを飲む旦那は、ニヤニヤしながら颯真さんにケータイの画面を見せている。
颯真さんはみるみると困惑した表情になって、チラッと私を見てきた。

大丈夫、何を見せているのかぐらいわかっているから。

また、大好きなキャバクラかガールズバーにでも行って、店員の女の子を引っ掛けたんでしょ。
それで、そのやり取りを自慢げに颯真さんに見せている…という感じだと思う。

颯真さんの肩に腕を回しながら、得意気になってケータイを見せる旦那にイライラしてきていた。

「ちょっと、颯真さんにそんなもの見せないでよ。嫌がってるじゃん」

「はぁ?俺が何見せてるのか分かるのかよ?そっか…勝手に盗み見たんだな」

「わざわざ見るわけないじゃん。そんなくだらないメール。たまたま見えただけよ」

私は本当に勝手に旦那のケータイを開いてないし、過去にも1度だってそんなことしたことはない。
なんだろう…女の勘てものかな?

怪しい…と思ったから、楽しそうにニヤけながらケータイを打つ旦那の後ろに回り込んで、チラッと見ただけ…。

「なにそれ?ってか、俺がどこに行って誰と飲んで、誰とメールしようがお前には関係ないだろ!俺はお前らを食わせてやってるんだ!!」

旦那はそう言うが早いか、ケータイをソファに叩きつけると、空いている片手で私の肩を思いっきり押したのだ。
もちろん私は男の力に敵うはずもなく、そのままバランスを崩して、後ろの壁に強く頭をぶつけてしまった。

「一華ちゃん!大丈夫!?友樹さん、落ち着いて下さい…!さすがに手を出すのはいけないですって」

「っるせぇなぁ、そいつが悪いんだよ~。ってかお前も俺に文句あんのか?」

旦那はお酒の力もあってか、いつもよりも更に口調が荒く、ついには颯真さんにまで絡んでいる。
そんな旦那をどうにか収めようと、颯真さんは自分にぶつけられた暴言を気にせずに、まぁまぁと旦那の背中を叩きながら、お酒を勧め始めた。

そんな彼の姿を見ていると、申し訳ない気持ちと同時に、私は安心感に満たされていた。

そして、颯真さんにお酒を勧められること1時間…。
すっかり酔いつぶれた旦那は、そのまま床でいびきをかいて寝てしまったのだった。

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