奥手な彼氏は嫉妬で狂う (Page 4)

「…っ」

ゆきくんの貼り付けたような笑みが消える。

「僕、本当に恵那ちゃんのことが好きなの。恵那ちゃんがいなくなるって思ったら、ここまでおかしくなるぐらい」

ゆきくんがリモコンを操作し、私は快感から解き放たれた。

「別れるなら今だよ。ここまで酷いことをしてしまったら、もう嫌われたってしょうがないし」

確かに今日のゆきくんは怖い。

でも、どうしても嫌いになるとか、別れるとか考えられなかった。

だって、私を見下ろす目があまりにも暗くて寂しそうだったから。

放っておけないなあって思ったから。

好きって言われて、嬉しかったから。

「私、ゆきくんのこと好き」

「…っ、」

「ゆきくんはいつも優しくて、私の味方で。今日はびっくりしちゃったけど、それでも好きなのがいっぱい伝わって…」

クタクタの身体で腕だけ動かして、ゆきくんの手を握る。

「じゃあなんで、!」

「浮気なんかしてないよ」

えっ、とゆきくんの目が大きく見開かれる。

「女友達の介抱でラブホを使っただけだよ。こんな遅くなるつもりなかったんだけど、結局私も寝ちゃって朝になっちゃった」

連絡できなくてごめんね、と謝ると、ゆきくんの顔からさっきまでの貼り付けたような笑みは消えて、薄らと涙目になっていた。

「ぼ、僕は、なんてことを」

「いいんだよ…それに、嫉妬されるの少し嬉しかったし」

こっちにおいで、とベッドサイドをたたくと、ゆきくんも横になってくれた。

私より背が高くて大人っぽい容姿をしているのに、しゅんとしている様子が子供みたいで可愛い。

「本当に、恵那ちゃんは僕の女神なんだよ」

「うん」

「付き合えただけで恐れ多くて、幸せで、だけど他の男からも人気があるから不安で」

「うん」

「今まで必死で、気持ちを出すのを抑えてた」

「うん…けど、私は嬉しかったよ」

「恵那ちゃん…」

慈しむように撫でてくれる。

「こんなに好きでいてくれてるなんて知らなかった、私も大好きだよ」

そういうと、ゆきくんは私を優しく抱きしめた。

少しすると、お腹あたりに何か硬いものが当たり出した。

ゆきくんの顔を見ると、気まずそうに目を逸らしていた。

「ゆきくん、これ…」

「あ、その、だって…恵那ちゃんとこんな格好で抱きあってたら…」

すっかりいつものゆきくんに戻ってしまった。

「じゃあ、しちゃおっか?」

そう言うと、ゆきくんがのそっと起きて、私に覆い被さるような体勢になった。

いつものゆきくんも好きだけど、たまにはこういうゆきくんも良いなあと思ったのは内緒。

Fin.

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