イケボな隣人を推すのはアリですか? (Page 2)
フェンスにもたれてベランダで缶ビールを開ける。この時期ベランダにはいい風が吹く。冬はつらいだけの風も過ごしやすい季節の今、気持ちよくビールもおいしく感じる。納期明け、夕暮れ。いやもう、明け方データ送った後死んだように寝たから一日ぐらい経ってるかと思った。
「あ、どうも。こんにちは」
「え、あ、大沢さんこんにちは」
お隣の大沢さんが洗濯物を取り込んでいた。隣なのにほとんど顔合わせないから、いることも知らなかったし。Tシャツに短パンとか色気のない服装でちょっと恥ずかしい。いかにも引きこもり的ファッションが。
「ここのベランダいい風吹きますよね。夕暮れのビールとか優雅で最高ですね」
「そう、そうなの。もう納期明けの体というか細胞隅々に染み渡るというか。至福のひと時って感じで」
くすくす大沢さんは笑っている。この良さがわかってくれるとは。今日が納期でよかったと思うなんてもしかしたら今日が最初で最後かもしれない。今日は天気がいいから夕日が綺麗で、それを眺めながら少し話した。26歳らしく、同じ年齢ということで懐かしいテレビや流行っていたものについて話が合った。
「あ、そういえば、昨日のおかず残ってるんで宅飲みとかどう?いくつかつまみつくるよ」
いきなりそんなことを言われて、思わずじっと顔を見てしまった。迷惑?と聞かれて、首を振る。
「身支度したら行くから…」
服装はともかくもうちょっと何とかしないと。とりあえずシャワーでも浴びようとお風呂場へと足を向けた。
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一時間後、インターフォンを押すと、開いてると声が返ってきたのでドアを開ける。
「どうぞどうぞ。適当に座ってそこら座って先飲んでて。あ、ピザ頼まない?仕事明けで冷蔵庫つまみぐらいしか作れないし」
「いいけど、あ、お財布持ってくるね」
「ピザ位おごるよ。どうせ俺の方がたくさん食べるし」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
その言葉にははっと軽く笑いながら、ピザのメニュー表を渡された。それ以上に料理の手際もはっきり言って私以上で、何かスープ的なものを作っているのかコンソメのにおいがした。
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