年下オオカミがお腹を空かしているそうです (Page 2)

同居生活は思っていたよりも円滑にできていた。お互い出勤時間も違うし、朝ご飯は別々。

といっても、スクランブルエッグやウィンナーなんかを置いていく日もある。夜ご飯は帰るのが早いほう。幹人君が料理できる子でよかった。休日はじゃんけん。いらない日は連絡すること。

当初言っていた通り、休日は不動産屋を回っているらしく昼間はほとんどいないのでゆっくり自分の時間が確保できる。金曜日は金曜日で一緒に映画のDVDを見たり。本当に思ったよりうまくいっている。

「条件の合う物件ってなかなかないね。ユニットバスは嫌だけど、そうじゃないと家賃が高いんだよな…」

なかなか物件探しは難航しているようだった。

*****

土曜日の深夜ふと目を覚ました。

「まだ、起きてるの?暗い中のスマホは目に悪いよ?」

「あ、起こしちゃった?いや、サイトにいい物件ないかなって」

「ふぅん。同居相手見つけてルームシェアっていう手もあるよ?ミキちゃんはイケメンだから、すぐに彼女もできるって。そしたら彼女と同棲もアリだと思うよ?」

私は結婚前の同棲賛成派だ。といいつつ、今まで彼氏と同棲とかしたことないけど。ミキちゃんはスマホの電源を落とす。むくりと起き上がり、私が寝ているベッドに手をつく。

「ねえ、それって相手が千沙ちゃんでもいいってこと?」

「…んっ?」

思ってもいない方向に話が転がり、寝ぼけ気味だった頭がはっきり覚醒した。ギッとベッドがきしみ、手首をシーツに固定される。

「最近ずっとお腹減ってるんだよね、足りないのは千沙ちゃんだ」

「ミキちゃん…?」

「その呼び方嫌いだな…」

ひとりごとみたいなボリュームでそんなことを言った後、唇に噛みつくみたいに口づけられた。それだけじゃ足りないとでもいうように、わずかに開いた唇の隙間から舌をねじ込まれる。歯列をなぞられ、上顎をなめられ、突然のことに縮こまる舌を絡み取られた。

「や、やめて…。これ以上はだめ…」

「本当に?体は嫌がってないみたいだけど。キスだけで、そんな誘うみたいな顔して」

いつの間にか手首の拘束は外れていた。でも、押しのけることはできなかった。両手でどんと押したら無理強いしてくるようには見えなかった。なのに、押すことも払いのけることもせず、きゅっと彼が着ているTシャツの袖をつかんだ。

その仕草は間違いなくこれから起こることへの同意と前言の撤回だった。

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