年下オオカミがお腹を空かしているそうです

・作

子供の頃弟のようにかわいがっていた母親の親友の息子を一時的に預かることになった千沙。子供の頃の面影ゼロの子といきなり同じ屋根の下とか言われても…。「最近ずっとお腹が減ってるんだよね、足りないのは千沙ちゃんだ」と迫られたらもう拒みきれない…

「あのね、親友の息子さんの幹人くんって覚えてる?ほら、3歳下の」

「いや、まったく」

「薄情な子ねぇ。あんたが6歳ぐらいの頃は一緒に遊んで弟みたいにかわいがってたのに。まあ、20年前のことだけど」

母親からの電話に出てすぐにそんなことを言われた。導入荒いな。20年前とか急に言われても…。ぼんやりと何かかわいらしい子と遊んだ覚えが。

「で、その息子さんがどうしたのよ」

「不動産屋の手違いで、ダブルブッキングしちゃったんですって。だから、新居が見つかるまであなたの家で預かってあげて。会社から近いんですって。頼んだわよ。お客さん扱いはしなくていいって言ってたけど、生活費は大丈夫よ。ちゃんと折半して、食費は6割向こうが持ってくれるっていうから。あ、明日には荷物届くって言ってたからよろしく」

言いたいことだけを言って電話は切れた。いきなりそんなこと言われても…。ここにきて23歳の男を迎え入れる準備も心構えも何もできてない。とりあえず、掃除するかぁ…。

*****

ピンポーン

インターホンが鳴り、慌ててドアを開ける。ガチャリとドアを開けると背の高いイケメンが立っていた。

「千沙ちゃん、久しぶり。ずっと会いたかった。これからよろしくね」

にこっと微笑んだ。いったい誰だこれは。昔のアルバムを引っ張り出して顔思い出したけど面影ゼロじゃん。いや、幼少のころから将来有望そうな顔してたけど。あ、でも右目の下の涙黒子は変わらないな。

「千沙ちゃん?」

「あ、ごめんごめん。久しぶりだね、ミキちゃん。今お湯沸かしてるから、ひとまずお茶でも飲もうか」

先に届いた荷物は触らないままとりあえず運び込んである。ワンルームじゃなくてよかった。一応2Kだ。

「一応お布団も届いてたけど、どこで寝る?ここか、一応寝室があるんだけど。ただ、スペースが狭いっていうか」

「いいよ、狭くても。休日は不動産屋さん回らないとだからあんまりいないだろうし。寝れるスペースがあればそれでいいよ」

「いいならいいんだけど。でも、びっくりした。20年ぶりにあったら面影ゼロで」

「まあ、昔は母親の趣味で女の子の服とかも着せられてたしね。男だと知って泣かれたときはさすがに幼心に傷ついたよ」

「えー、そんなことあった?でも弟みたいでかわいがってたって聞いたけどなぁ」

外見からクールなイメージを受けていたけれど、話すととっつきやすい。ま、新居が決まるまでだし、気楽にやっていこう。

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