キューピッドは赤いパンティ (Page 2)

「なんで?なんでですか!?」

推し似の男性は、私を見ている。怖いくらい、表情が変わらない。

「昨日、見て…声掛けたかったけど…思いつかなくて」

顔がちょっと赤くなった。

可愛い…。

「返して…ちょっと、ちょっと待って…」

来ないで、来ないで…もう背中、壁だから。

あと…そんな目で見ないで。

両手を掴まれた。あ、と呟いたら、軽く唇が重なった。

「一目惚れしちゃって…」

推し似の男性は、少年のようにもじもじしている。

あんなにぶっきらぼうな態度だったのに。

「彼氏…いるでしょ?」

キスに動揺して答えられずにいると、また顔が近づく。

ゆっくり時間を掛けて、キスされた。

両手で頬を持たれ、唇の間からやすやすと舌が入ってくる。

舌を絡ませ合い、唾液の音がする。

こんなキス…とろけてしまう。

「…すげー…可愛い」

重ねた唇の間から言葉が漏れ、私は全身から力が抜けていく。

「危ないよ」

「あ、ありがとうございます…」

フラつく私の腰に大きな手を回し、支えてくれた。

「仕事、戻ってもいいですか…」

「すいません…俺も、工事します」

どうしよう…修一いるのに。

一日掛かりで、資料をまとめた。

ミスタイピングを見つけては修正を繰り返して、やっと終わった。

「今日の工事、終わりましたぁ」

「ありがとうございました」

テーブルから見送ろうとしたら、玄関にずっと立っている。

ソファから立ち上がって、玄関に近づいた。

「あの洗面所の…赤い…」

昼の、赤い…。

?!オープンクロッチ?

心臓がバクバクし始めた。

「見せてくれませんか?」

「な、なんでですか?…」

見せるって…。

頭をポリポリ掻きながら、私から目を逸らしてる。

「ああいうの、初めて見たんで」

あんなキスする人に、初めてのこともあるんだ。

見せるだけだったら…。

ポケットから出して見せようとすると、長い腕が伸びて赤いパンティは男性の手の中に入った。

「ちょっと待ってください!」

バタンッ。

笑顔で部屋を出て行った…パンティを持って。

玄関にうずくまった。

笑顔で奪われたパンティ、昼間のキス、推しに似てる顔。

ひざを抱えてため息をつき、そのままコロンと寝転がった。

キスされたときから、あそこはびしょびしょ。

お風呂…大家さんとこだ。

「あ、掃除…服、あー泥…」

パンティと服を脱ぎ、洗濯ネットに入れた。

掃除しなきゃ…部屋着のワンピースに着替えて、工事中の風呂場に入った。

『ごめんなさい タカシ』

風呂場のタイルに、マジックで書かれていた。

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