左手の薬指からはじまるイケナイこと (Page 6)
その後、あらゆる刺激を受けて放心状態となった私をタクシーに乗せてリョウタは見送ってくれた。
家に着いたのは日付を越える前。
ずっとリョウタといた気がするのに、大して時間が経っていないことに驚いた。
キョウスケが「おかえり」とにこやかに出迎えてくれて、抱きしめられたときに酔いから覚めた。
『酔い』という夢というか魔法というか。
ふわふわとした感覚で、大変なことをしてしまったかもしれない。
既婚者でありながら、誰かのものでありながら、してはいけないことをしてしまったかもしれないし、その先を望んでしまっていた。
眠りにつく前に自分で左手の薬指をなぞる。
そのまま咥えて舐め、唾液を絡ませてみる。
リョウタの匂いと、温度と、低く囁く声と、手の感触。
それらを思い出し、ずっと欲しかった下半身へと刺激を与える。
キョウスケが隣にいるというのに指の動きは止められない。
すでにじっとりと濡れたアソコは、数回撫で力を軽く加えるだけで絶頂に行き着いてしまった。
びくんびくんという余韻に浸りながら、リョウタの別れ際の囁きを反芻させる。
「今日はこれでおしまい」
「また、僕に没頭したくなったら言ってくださいね」
*****
数日経ち金曜日。
リョウタからの営業アシスタントの打診は、キョウスケも快諾してくれ喜んでくれた。
リョウタへメッセージを送る。
「営業アシの件、ぜひ前向きにお話進めさせてください。これから楽しみ。いろいろとよろしくね。」
いろいろと。
光る左手の薬指はどちらの方向を指すのだろうか。
私は夢と現実、どちらを選ぶのだろうか。
Fin.
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