ご奉仕しますわっ!?
私は名家の令嬢として育った世間知らずなお嬢様。…だったけれど、奉仕に来た執事のクルスに一目ぼれして、自分を磨きめでたくお付き合いできることになった。ある日、クルスのために何かしてやろうと思って…。そうだ、この私がご奉仕をしてあげましょう!
私のもとにクルスが初めてやってきたのは1年前だった。
「慣れないところもありますが、よろしくお願いします」
私はその頃は“ワガママ姫”と呼ばれるほど、ことあるごとにメイドや爺に八つ当たりをする日々だった。
しかし、クルスはどんなに嫌味を言ってもその丁寧な姿勢を変えることはなく、私は徐々に「こいつの鼻をへし折ってやる」という気持ちを抱いていった。
「お茶の温度がいまいちですわよ」
「失礼しました。この前最適だとおっしゃっていた温度にしましたが、次は気を付けますね」
そうしているうちに、徐々にクルスに惹かれていってしまった。
そのうち、嫌味を言うのもケチをつけるのも面倒になってきた。
(どうすればアイツを落とせるのかしら…!)
それから必死に勉強に励み、礼儀作法も身につけた。周囲からは病気を疑われましたけれど。
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「好きですわ、あなたのために自分を磨きました」
そうして半年間。地獄の特訓の日々を経て、私はクルスに告白をした。
彼は笑って、「ありがとう」と言って、受け入れてくれた。
そうしてお付き合いの日々がかれこれ半年続いたが、いつも執事である彼に奉仕をされてばかりであった。
(私もクルスのためになにかできないかしら…でも、何をすればいいの…!)
そこで私はメイドに頼み込んで、メイド服を借りた。
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私はクルスの部屋の前に立っていた。借りたメイド服を着て少し照れくさい気持ちだったが、ここまで来たらもはや勢いだと思った。
「ご奉仕しますわ!!」
私はそう大声で彼の部屋の扉を開ける。
私のそんな様子を見て、クルスは少しびっくりした様子だったが、暫くして「あっはははは!」と大笑いを始めた。
「…はぁ?」
「さすがの僕もみんなから聞いてましたよ。お嬢様の考えていることは」
ムカッとした。つい、昔の横暴な私が帰ってきて、叫んでしまう。
「はぁ!?せっかくこの私がご奉仕をするというのに、そんな風に大笑いして知っていただなんて、酷いですわ!」
クルスはそんな私の様子を見て、いつものように微笑んでこう言う。
「じゃ、ご奉仕してくれますよね?メイドさん」
彼はそう言うと私をお姫様抱っこし、ベッドに押し倒した。
彼の眼は見たこともないような、少し怖い眼差しだった。
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