どうか私だけを愛して
私は人気アイドルグループ「エス」のメンバーであるリョウ君の大ファンだった。女好きで、夜遊びが激しいといううわさも絶えなかったが、私はそれでも彼が好きだった。そんなある日、仕事が長引いた夜の帰り道、怪しい男に声を掛けられ、強引にホテルに連れて行かれる。服を脱いだ姿を見れば、それはリョウ君だった――。
その日は仕事の終わりが遅くなってしまい、私は一人夜の街を帰宅しているところだった。
会社の近くは時々不審者が出没するという話も出ているため、帰る際には警戒する必要があったのだ。
理由はおそらくこの辺りにラブホが多いからだと思うけれど。
正直怖いので、勘弁してほしいものだった。
そんなことを考えながら歩いていると、突然声を掛けられた。
「やあ、お嬢さん。俺と一発、どうよォ」
黒いパーカーを羽織った謎の男は、私にそう言って声をかけてきた。
私は恐怖のあまり一歩後ろに引くが、腕を強くつかまれる。
なすすべもなく、私は近くにあったラブホテルへと連れていかれた。
*****
「じゃ、俺とりあえずシャワー浴びてくっから」
男は独特の香りを漂わせながら、シャワーに向かう。
(この香り、リョウ君と同じ香水なんだな…)
リョウ君というのは、私が追っかけをしているアイドルグループ「エス」のメンバーの一人だ。
少し俺様系なところが人気な、ワイルドな印象の青年だ。
彼のことが大好きだが、せいぜい遠くから見守ることくらいしかできないのかな…と思いながら、私は今日も彼に貢ぐためのお金をせっせと稼いでいた。
暫くして、男が出てくるとともに私は絶句した。
その姿はまごうことなく、リョウ君だったからだ。
顔はかなり赤くなっており、「どうしたの?早く」と一言。
酒の香りが漂ってきた。酔っぱらっているのは間違いないようだ。
私は足早にシャワーを浴びて、ベッドのほうへと向かった。
(リョウ君と、こんなことするだなんて、夢みたい)
*****
「遅いよ。さ、早く」
彼は吸っていたたばこを置くと、ベッドに来た私を押し倒した。
真上に、リョウ君の顔が迫ってくる。
「へえ、案外かわいい顔してんね」
そういうと彼は私にキスをするとともに、口の中に舌を潜り込ませた。
ぬるり、とした舌が口の中を激しく這う。
「あっあぁぁぁっ、まっ、んぐ」
私がつい声をあげてしまうと、彼は舌を出し私に向かって一言、微笑みかける。
「激しいキスは感じちゃうよね~、俺も好き」
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