怖いオトコに濡れる夜 (Page 2)
「ほんの10分でいいんです」
今日一番の笑顔を向けられて軽く睨みつけた。
「どうしてつきまとうんです?」
「口説いていると言ってください」
「その若さで上場企業の三代目社長なんですから、合コンもお見合いも自由に溢れているはずでは?」
「自由すぎると人は正道を見失いがちになるものですよ。それに俺は遊び相手が欲しいわけじゃない」
「そうは見えませんが」
ふふっと鼻で笑った。ら、
「本気で言っていますか、篠原先生」
思わず息を呑んだ。社長の笑顔が真顔に変わっていたから。
「顧問弁護士をしてくださっている方をもてあそぶような経営者だと?そんな評判を落としかねないリスクを負ってまですることではないと先生だって分かるでしょう」
「…なら、なおさら私を選ぶ理由がありませんね」
「それだけ本気なんです」
普段笑顔の人間が真顔になると怖いものだ。ごく、と喉を鳴らしてグラスの雫を撫でた。
久々に見せられた笑顔以外の顔。
そしてやっぱり、どことなく胡散臭くて怖い。
身をかわして逃げるこちらの一歩先に、するりと回り込んでくる手際の良さが。
この顔の良さと胡散臭さのアンバランスさがどうにも居心地悪く、じっと見られていると自分の背中に一筋、水を落とされているかのようだった。
良い
初めまして。私・某進学校で数学を担当して居ります。忙しい時期ですが元気を貰います。嬉しいです。
国立 さん 2021年9月29日