クレイジーラブ

・作

女の子は口説かなきゃ。を地で行く兄の親友”くぼしょー”こと、翔くん。私、松浦ハナは、密かに翔くんに恋心を抱いているけど、ハナちゃんって親友の妹くらいにしか思ってない態度に距離を感じて、いつも素っ気ない態度しか取れないの。そんな矢先に…

「ハナちゃん、今日もおっぱい大きいね!俺と付き合おうよー!」

「…ハイハイ」

「…ったく毎回毎回、くぼしょーも飽きねーな!ハナに言い寄ったって面白くも何ともないだろ」

「おにい、余計なお世話!」

「ホント、ホント。おにいうるさいよ。俺、本気なんだけどな〜」

(それですよ、軽いんですよ)

家に遊びに来るとこの言葉が挨拶がわりの兄の親友、翔くん。最初の頃は本気にして頬を赤らめては、からかわれていたっけ。

「女の子は口説かなきゃ」を地で行く翔くんと兄は、高校からの付き合い。

兄によると学生時代、今みたいに声かけしては、相手が反応すると急に冷たくなったり、翔くんに口説かれて好きになった女性が、告白したら無反応になったり。中には勿体ないくらいの綺麗な女性もいたみたい。

「で、お洒落したハナちゃんはどこにお出かけするのかな?」

ちょっとしたリズムに乗せ聞いてくる翔くん…腕時計を見たら約束の時間まで30分を切っていた。

「は!翔くんに付き合ってる場合じゃなかった!」

「ハナちゃん、酷いよ!」

「急がなきゃ!おにい、今日晩ごはん要らないから!行ってきまーす!」

「…え、ハナちゃん!」

「ふ、ハナもそろそろ”卒業”か」

「…(卒業、ねぇ)」

確かにいつもの私じゃない、はず!今夜は高校時代の同窓会があるから真新しいワンピースに袖を通した。

テラス席が雰囲気抜群のお店で、夜景や星空が大好きな私にとって、同級生に会える喜びより…内緒だけど、メインはこっち。

*****

(すごい…この景色!想像以上に素敵なお店!あー幸せ〜!)

話も料理もそこそこに、涼やかな風が吹くテラス席で穏やかな時を過ごす。足元をほんのり照らす照明も、空気も柔らかく、どこか大人の色がある。

「あー私もこの景色をバックに撮りたいなぁ…」

「大きな独り言だな松浦。俺が撮ってやろうか?」

「あ、久保先生!ぜひ、お願いしますっ」

「ほら、近くに寄れ」

「…えっ?」

先生も入るの?って言う前に肩を抱かれて私のスマホにツーショットが収まる。

「…どうだ?」

「え、あ、思ってたより凄くいい写真です」

「だろ?」

「ありがとうございます」

「相変わらずだな」

「え?」

「高校の時から夜景とか好きだって騒いでただろ」

「…よく、知ってますね」

「…俺も嫌いじゃないからさ。だからもっと…感動する夜景を見に行かないか?」

「…あ、の」

ビクッと肩を揺らしたのは、先生が私の腕を引き寄せたことで、息がかかる程近い距離のせい。

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