雪国の旅、氷瀑、かまくら、初体験!幻想的な滝壺で出会った二人のエロチック・サスペンス!? (Page 7)
氷瀑近くの駐車場に着いた。
「絵美さん。実は何日か前に乗せた女性のお客さんも同じようなことを言ってました。その人も、この氷瀑で、あのシマウマ柄の帽子の男に話しかけられてました。その男が犯人かどうかわかりませんけど…」
「そうだったんですね。あれ?待てよ…」
考えがまとまらないまま、絵美は氷瀑に向かって歩き始めた。
*****
林の中の小道を抜けると、絶景が見えてきた。
「あれ?」
あの帽子、正樹だ。
絵美は、とっさに太い樹幹の陰に隠れ、片目だけ出して観察する。
正樹は昨日とほぼ同じ場所で、一人旅と思しき若い女性と話している。
(そうか。ここはあいつの狩場で、一人で来てる女の子を毎日のようにナンパしてるんだ。そして、夜はかまくら村に誘い込んでエッチする。何棟か崩れてたかまくらは私の前にあいつがエッチに使ったものなのかもしれない。あいつは崩れるタイミングも熟知していた)
絵美の中でパズルのピースがピシッ、ピシッと組みあがっていく。
(あのときの手つき。エッチの最中に服を脱がせながら、ジャケットのポケットに財布があることを確認してたんだ。旅行者は、ある程度まとまった金額を持ち歩いてるものだし)
絵美は足元の雪を掬い、硬い雪玉に握り固める。
(雪に埋もれたジャケットを探してるふりをして、どさくさに紛れて財布からお札を抜き取る。大ごとにならないよう大金は盗らない。旅先で2~3万くらいの紛失ならたいていの人はあきらめるだろうし、泥棒の証拠もない。女性はナンパされてエッチした後ろめたさもあるから警察に訴えることもない。あいつはきっとそう考えてるんだ。エッチして仲良くなったのに連絡先の交換もなく、すぐ逃げたのも肯ける)
正樹の観察を続けていると、どうやら今回はナンパに失敗したらしく、若い女性は挨拶もなく小走りに離れていった。
(昨日は、このタイミングであいつに雪玉が飛んできたんだった。猿のいたずらだって?はぁ?きっと仕返しだよ!私の前の子も同じ思いだったんだ!)
絵美の中でカチリッとパズルが完成した。
静かに呼吸を整え、踏ん張りが効くよう足場を固める。
正樹は、キョロキョロと見回して次の獲物を探していたようだが、周りに人がいなくなったので、歩みを止めてタバコに火を付けている。
今だ!
絵美は胸の前で雪玉を握りなおすと、木陰から離れ、丁寧な投球フォームで渾身の一球を…。
投げた!
レーザービーム一閃。
雪玉は正樹の顔面に見事にヒット!
正樹はそのまま雪の上に大の字に倒れた。
それを見届けるや否や、走って逃げ出す絵美。
途中、振り返ると、正樹は雪の上に座り、頭を振っている。
「はあ、はあ。ふふふ。ケガはないようね。あぁスッキリした。はあ、はあ。せいぜい猿のいたずらには気を付けなさいってんだ!はははは!」
楽しい旅は続きそうだ。
Fin.
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