雪国の旅、氷瀑、かまくら、初体験!幻想的な滝壺で出会った二人のエロチック・サスペンス!? (Page 2)
「かまくら…村?」
「ええ。かまくらは人が入れるくらいの雪のドームのことです。それがたくさんあって中でコーヒーやお酒を飲んだりできますよ」
「わ~、楽しそう。後で行ってみますね」
そこに、絵美さ~んとタクシードライバーの声。
なかなか戻らないのを心配して呼びに来たようだ。
「あ、私、そろそろ…。タクシーを待たせてるので…。また会えるといいですね」
「引き留めてしまってすみません。では、よい旅を…」
絵美は別れを告げて歩き出した。
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「わ!」
「え?」
正樹の叫び声に振り向くと、ヒュンヒュンとどこからか雪玉が飛んできて、1発が正樹の背中に当たった。
「痛っ!」
小走りに逃げる正樹。
「大丈夫?」
駆け寄る絵美。
雪玉は林の中から飛んできたようだが、人影などは見えない。
「たはは…。猿かなんかのいたずらかな?」
「ケガはないですか?これ、落ちましたよ」
絵美は正樹が被っていたゼブラ柄のニット帽を拾い上げ、雪を払ってから手渡した。
「大丈夫です。心配してくれてありがとう」
「いえいえ。気を付けてくださいね」
「あとで地元産のワインでも差し入れに行きますよ」
「どうぞお気遣いなく。私も猿に備えて雪玉を持ち歩くわ」
「ははは。それがいいね」
絵美はタクシーに向かって歩きながら地面から雪をすくい上げ、おにぎりのように握ってみた。
湿った雪質で、すぐにボール状になった。
人のいない樹々に向かって投げてみる。
幹にあたって音を立てて砕ける。
懐かしい感覚。
球を投げるのは本当に久しぶりだ。
学生時代はソフトボール部で外野手だったんだ。
当時ほどの球威はないがコントロールは衰えてない。
自然に笑顔になる。なんと楽しい旅行だろう。
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まだ明るいうちにホテルに到着し、さっそく炭酸温泉を堪能した。
シュワシュワで気持ちいいし、お肌もつるつるになりそうだ。
国のキャンペーンは奏功しているとはいい難く、ホテル内は閑散としていて、温泉は貸し切り状態だった。
豪華なフレンチの夕食を早めにいただき、ほろ酔い気分であったが、しっかり防寒して「かまくら村」に行ってみた。
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