雪国の旅、氷瀑、かまくら、初体験!幻想的な滝壺で出会った二人のエロチック・サスペンス!?
一人旅で初めての雪国へ!素朴な雪のドーム「かまくら」は妖しい卑猥スポットに一変!ファンタジックな氷瀑は危険なリベンジ・フィールドに急転!仕事に疲れたアラサー女子の出会いと大冒険!癒しの希望は叶えられるのか?
「トンネルを抜けると雪国であった」っていうのは、こういうことなんだぁ。
ただし、この新幹線はトンネルばっかりだったけどね…。
一人旅中の絵美は内心大はしゃぎだ。
なにせ、旅行をするのは久しぶりだし、雪国を訪ねるのは初めてだ。
これまでの30年の人生でも、雪がチラチラ降っているのを見たことはあるが、積もっている状態を実際に見たことはなかった。
滑りやすい足元に気を付けながら、駅から観光タクシーに乗り換えて、自分のペースで名所を巡りながら銀世界を満喫した。
天気は上々、タクシーの年配女性ドライバーも親切で、街中ではスイーツのおいしいカフェや、地元が舞台になったアニメ作品の聖地、山道に入ってからは眺めのいい展望スポットやきれいなトイレなどを案内してくれた。
普段なら観光タクシーなど贅沢の極みだが、昨今の不況から国を挙げての観光キャンペーンが展開中で、今はタクシーだけでなく、新幹線も高級ホテルも半額以下というまたとない事態となっているのだ。
雪の山道はクネクネと渓流沿いに湖まで続いていて、樹氷が広がる異世界だ。
途中に、今の時期しか出現しない氷瀑(ひょうばく)があるというので立ち寄ることになった。
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氷瀑とは滝が流れ落ちる、その形のままで氷結したもので、まるで北欧のファンタジー童話に出てくるような偉観だった。
「すごい…。きれいというか、神秘的で魔法みたいな光景だわ…」
絵美はタクシーを待たせて、徒歩で間近まで見に来たのだった。
氷瀑の周りには何人か観光客たちが集まっており、歓声を上げたり写真を撮ったりしていた。
絵美も心を奪われてずっと見入っていた。
「撮ってあげましょうか?」
絵美がカメラを構えていると、声を掛けられた。
「はい?」
「氷瀑をバックに撮れば、いい写真ができますよ」
「えと…、じゃあ、お願いします」
何枚か撮り終えると、その男性は、正樹と名乗り、周囲の見どころを教えてくれた。
「ここの氷瀑は大きくて迫力がありますけど、もう少し上流の方には小さいけど階段状の氷瀑があっておもしろいですよ」
「正樹さんってこの辺に詳しいんですね。地元の方なんですか?」
「いや、僕も旅行中だけど、なんだかここが気に入って近くの宿に連泊してます」
「いいなあ。私は明日また移動しないといけないけど、いい景色を味わえたわ。あとはホテルの炭酸温泉が楽しみです」
「炭酸温泉のあるホテルといったら、Sホテルですね。その本館の裏手に「かまくら村」がありますよ」
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