嘘つきな最終電車
私たちは単なる先輩後輩で、恋に落ちたりなんかしない。ましてやそれ以上のなんだかイケないことなんて絶対だめ!わかんなかったら答えるっていうのは、そんなことについてじゃないんだってば!
「『わかんなかったら、何回でも訊いてね』って言ったの、先輩じゃないですか」
「たしかに言ったけど、それは仕事の話!」
『お給料入ったから飲みに行きましょうよ』って言われてホイホイついていった私が悪いの?
ここは会社から少し離れたラブホテル。
もちろんこんなところに来る予定なんてなかった。
だけど、「間に合うように出ますから、少し休ませてください」と、怪しいネオンが光るこんなところへ、なし崩しに引っ張り込まれてしまった。
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具合が悪いと言っていたはずの後輩は、バスルームの扉の向こうから「入れてくださいよー、そんなこと言ってないでー。僕のこと、そんなに嫌いなんですか?ずっと好きだったって言ってるじゃないですかー!」と、あっけらかんと話しかけてくる。
「ただの後輩に好きだの嫌いだの、あるわけないでしょ!」
どうしよう、どうやってここから出て帰ろうか。
ああ、終電が来ちゃう!
そんな心配をしていたら、ずっとぐいぐい押されていたドアが、ふっと軽くなった。
え?どうしたの?
気になって力を抜いてみると、待っていましたとばかりにドアが開かれた。
驚く私に一瞬笑顔を見せた後輩は、いきなり遠慮なく抱きついてきた。
抱きしめられたままで私の腕が全く動かせなくなっているのをいいことに、顔を近づけてくる。
唇がゆっくり首筋をなぞる。
「だめだってば。今ならなかったことにしてあげるから」
「教えてくれないなら何回でも訊きます。身体に」
ゆっくり床に座らせられると、腕がほどかれた。
キスのせいでやたらとドキドキして力が入らない。
いつもはヘラヘラしてる後輩のくせに、なんとなくかっこよく見えてしまう。
気のせい。こんなの絶対気のせい。
「アリサ先輩」
「ちょっと、名前!」
「こんな時に名字で呼ぶわけないでしょう?僕も名前で呼んでください」
「忘れたから呼ばないわよ」
正座を崩したような格好で座っている私のタイトスカートの中に後輩の右手が入り込んでくる。
え?ちょっと!
ストッキングの上から太もものあいだの敏感なところをなぞられる。
背中を預けるところがなくて不安定で、少ししがみついてしまう。
「呼んでくれないんですか?寂しいなあ」
聞き慣れた少しふざけたような口調とは裏腹に、中指の動きはスリスリとだんだん早くなる。
自分の吐息に、声が混ざるのがわかる。
聞かれちゃだめな声。
どうしよう、バレちゃう。
ビクッと反応したりしたら、思う壺じゃない。
「気持ちいいですか?」
いつの間にか耳元に唇を寄せていた後輩にいつもより少し低い声で囁かれて、思わず声が出た。
こんな声、聞いたことない。
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