おカタイ上司はアレも硬い?!

・作

アニメのリアタイ視聴がしたくて急いで残業を終わらせたら、まさかの電車の遅延!!早く帰りたいのに…と思っていたら、いつもは冷たい上司がまさかのリアタイ視聴組で?!部屋に誘われ、一緒に見ることに。いつもはムカつく上司の意外な一面にちょっと驚きながらくつろいでいたら、何故か迫られ、酔った勢いのままキスされてしまった私、実は…。

電話をかけまくって、欠品させてしまった商品の代替えを融通してもらうこと数時間。

残業を駆け抜けて、めどがついたのはもうギリギリだった。

頑張ったわ、私。

散歩に行きたい犬より早くデスクを片付けて荷物をまとめて上着を抱えた。

ダッシュで帰宅すれば放送まで何とか間に合いそう。

と、廊下を行きすがらに兵藤チーフとかち合った。

「え?」

「おう」

チーフも早く帰りたいと言ってたのは嘘じゃなかったらしく、ざかざか私と同じ速度で歩いて同時にエレベーターに飛び乗った。

チラッと横を見るといつもの冷たそうな横顔。

襟足を軽く刈り上げた清潔そうな髪型に、整った鼻の形と輪郭。

確かにみんなが言う通り、イケメンはイケメンだけど私には何の得にもなってない。目つきが悪いし性格は冷たいし仕事は細かい。

今日の残業だってわざわざ私を指名してくるし、正直まだイラついてる。

エレベーターを降りると、同じ駅に向かってるのに気づいた。

「チーフ、こっちなんですか?」

「お前こそ」

私は小走りなのに早足の余裕で歩いてるのがまたムカつくわ。

*****

駅に着いて改札をチーフと同時に抜けた瞬間、アナウンスが聞こえてきた。

『車両故障のため、一部沿線で振替輸送を実施しております。ご利用のお客様には…』

どこ?!車両故障ってどの線?!

「あ…」

嘘でしょ。私が使ってる線じゃない。振替輸送なんてしたら一時間は遅れるに決まってる。間に合わない。

何で?

残業、すっごい頑張ったのに。

録画してるから見れないわけじゃないけど、リアタイできないのがつらすぎる。

「おい、原田」

頭の中でぐるぐるしながら電光掲示板を見上げてた私の肩を誰かが叩く。

チーフだった。

「お前もリアタイ視聴組か」

「え?!」

ぐりんっと振り向いた。

「そのアクリルキーホルダー、前からつけてるからまさかと思っていたが、お前もあのアニメ、見てるんだろ」

「…はあ」

っていうかそれだけで?何で?分かるの?

疑問でいっぱいになった私の顔から、チーフが軽く目をそらした。

「さっきエレベーターでお前のスマホの画面が見えた」

「盗み見ですか?!」

最悪だわ、このチーフ。

「たまたまだ。で、間に合うのか」

「間に合いませんよ…もう」

踏んだり蹴ったりよ。

今日もチーフにチェック入れられまくりの上に、ご指名残業で、最後は振替輸送。

足が重くて動くのもやんなっちゃう。

「うちに来い。近いぞ」

「は?」

「今日で地下室編の真相がわかるんだぞ。多分、あそこは主人公の過去の記憶と同じ場所だ」

「え、そうなんですか!?っていうかチーフ、何で知ってるんですか?ネタバレ?!」

「予想だ。地下室の壁のレンガに貼ってあったポスターが、チラッとだけ映ってたからな。つまりあそこはヒロインが、」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!その考察、ゆっくり聞かせてくださいチーフ!」

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