「お嬢様様には素直になっていただきます」高飛車な私への調教が始まる…!」
ご機嫌斜めな高飛車お嬢様星蘭に、執事の明人は挑発的な言葉を投げかける。怒りに燃える彼女を冷静に捉えた明人は、強引にキスを奪い、ベッドへと押し倒す。「完璧な令嬢」に素直さを教え込むため、彼の調教が始まる――禁断の時間が幕を開ける。
星蘭はヒールの音を響かせながら豪華な門をくぐる。その音がこの邸宅の静寂を引き裂き、私の存在を強く主張しているかのようだ。
だが、そんなことは気にしていられない。胸の奥でくすぶる苛立ちが、私をじっとさせてはくれないから。
噴水の前で待つ明人が深々と頭を下げるのが目に入る。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
その低い声が耳に触れるたび、どうしてか私の中の感情がざわつく。だが、今はそんなことを考える余裕などない。
「…はい」
返事をする代わりに、バッグを押し付けた。目を合わせる気にもなれない。どうせ彼には、私のこの苛立ちの理由などわかっているのだろうから。
「また縁談が破談になった、とお見受けしますが」
彼の静かな声が背中越しに響く。私の足が無意識に止まった。
「…余計なことは言わないで」
そう冷たく返して足を速める。ああ、どうして彼はこうも私の神経を逆撫でするのだろう。
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自室に戻ると、ベッドに腰を下ろし、深いため息をついた。
「また情けない男だったわ」
声に出してみても、この苛立ちは消えない。鏡に映る自分の姿を見つめる。髪も肌も完璧に整えられた令嬢そのもの。これだけの自分を受け入れる器を持つ人間がいないなんて、世の中の男たちは本当に情けない。
ノックの音が響く。明人だとわかっていた。
「お疲れのところ失礼いたします。おやつにチョコレートと紅茶をお持ちしました」
「いらないわ」
そう言いながらも、彼が差し出したトレイに視線が吸い寄せられる。香る紅茶の匂いが、部屋に広がる。
「お嬢様の魅力は確かに他の誰にも負けません。ただ、未来の旦那様になる方は猛獣の手綱を引く覚悟が必要でしょうね」
彼の言葉に、心がざわつくのを感じた。それが怒りだと気付いたのは、数秒後のことだった。
「何ですって?」
立ち上がり、彼を睨みつける。怒りの炎が自分の中で燃え上がるのがわかった。
「あなた、一体何様のつもり?私をバカにするのも大概にして!」
明人は私の怒りを面白がるような笑みを浮かべながら、一歩、また一歩と近づいてくる。その冷静さが、ますます私を苛立たせる。
「お嬢様、先程の大声はいけませんね」
そう言った次の瞬間、私の腰に彼の手が回された。驚きに目を見開く間もなく、唇が奪われる。
「な、何を…!」
拒絶の言葉を出そうとするが、彼はそれを聞き流し、私を抱き上げる。お姫様抱っこ――こんなことをされるのは初めてだ。
「お、おろしなさい!」
言葉とは裏腹に、身体は動かない。彼の腕の中で感じる体温と力強さに戸惑っている自分がいる。
ベッドに投げ出されるように寝かされると、明人が私を見下ろした。
「お嬢様、あなたにはもっと素直になっていただきます」
その声が低く響き、私の心臓は嫌でも早鐘を打つ。
「私は執事として、あなたの完璧さを保つために尽力しています。でも、その高飛車な態度、少しだけ矯正が必要ですね」
彼の視線に捕らえられ、動けない。怒りと羞恥、そして言いようのない感情が私を支配していた。
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