ゆるふわ君は意外と重たいオオカミ
高身長、営業成績優秀、クールで通っている同期の佐藤隆臣は、実はJKばりに可愛いものに目が無いスイーツ好きの男子。ひょんなことからその秘密を知った私は、彼と一緒にスイーツ巡りをする友人関係になった。だけど酔った勢いでいきなりホテルに連れ込まれたその夜、私に泣きながら告白してきたのは…?!
「奈緒ちゃーん、デザートバー早く行こーよー」
「ちょっと待ってオミ君、あとちょっとだからっ」
ダカダカとタイピングする私のデスクに顔を乗っけて、オミ君がこてんと首を傾げる。
それを横目にエンターキーを勢いよく押した。
「終了!」
「やったー!ね、ね、早く行こう!」
にょきっと立ち上がったオミ君を今日もしげしげと眺めてしまう。
「やっぱり大きいね、オミ君」
「僕別にそんな大きくないもん。奈緒ちゃんが小さすぎるんでしょー」
「私は平均ですぅ。あと190センチ超えはこの日本では大きいんですのよ隆臣さん」
「その呼び方、次にしたらもう絶交だからね」
「みんな呼んでるじゃない。このフロアだけで何人佐藤さんがいるのよ」
「二人だけの時はオミ君って呼ぶ約束でしょ」
むっとした横顔をチラッと見上げる。
私と同期の彼は入社以来、中身も外見も優秀な営業部のホープと注目を浴びまくっていた。
けど。
「クールで怖そうって囁かれてる佐藤隆臣さんが、まさかこんなゆるふわなJKみたいだなんてねえ。社内のみんなが知ったらぶっ倒れるわ」
「う…、このこと、本当に秘密だからね?」
「はいはい」
ほんの少しビクビクした様子を見せたオミ君に微笑む。
彼は普段こんなに喋らない。口調もまるっきり違う。
話しかけられても最小限の答えを返すだけで自分の話もしない佐藤隆臣に、女子社員が群がっていたのは最初のうちだけ。
他人に対して無関心と無愛想一辺倒な姿勢に、櫛の歯が欠けるように人が離れていくのは早かった。
それでもその態度を崩さないままの彼の秘密を私が知ったのは、本当に偶然。
休日の午後。
立ち寄った喫茶店で佐藤隆臣を見つけた。
趣味の良いその店は店主のこだわりで、海外製の高級ティーセットで美味しい紅茶を出してくれる場所だった。
奥には可愛らしい壁紙で彩られたドールハウスみたいなソファ席がいくつかあり、そこに彼はいた。
ケーキのお皿を片手にニコニコしながら。
その珍しすぎる佐藤隆臣の笑顔も、たまたま近くに座った私とばっちり目が合った途端、豹変したけど。
(見たの…?)
(見ちゃった…)
という会話を目でしたのをよく覚えている。
すぐさまケーキを口に詰め込んで出て行かれてしまい、私は私で翌日出社して佐藤隆臣の姿を見つけても素知らぬ顔をした。
だけど当の本人は、そっけないふりをしつつも私をチラチラ見てはスッと顔を背けていた。
だからつい、休憩時間に話しかけてしまった。
あのお店都内にもう一店舗ありますよって。
そっちはもっと女の子向けですけど良かったら行きませんかと誘ったら、パッと目を輝かせた。
それからアフタヌーンティー、有名パティスリー、デパ地下のバレンタイン催事を共に過ごして今に至る。
ショッピングに付き合ってもらうこともあった。
ホテルのラウンジに行く際に、ちょっとばかりおしゃれするつもりでシフォンスカートを履いて行った私を彼はいたくお気に召したらしく、スカートっていいねヒラヒラしてていいね、と幼女のように褒め称えてくれた。
女性もののアパレルブランドのショップに連れて行ってみたら、私そっちのけで服を手に取って眺めていた。あのキラキラした目で。
可愛いね綺麗だね、とうっとりした顔で喋る彼は、会社で見せる佐藤隆臣とは全く別の人間だった。
最高です
終わり方が、実際にどういう行為をしたのか想像を掻き立てられてドキドキします。
りん さん 2021年7月3日