若い果実は感じやすい
妻と長いことご無沙汰な年上男性黒崎は、推しのガールズバーキャストすずとの飲み会の帰り、酔い潰れたすずの無邪気な色気についムラムラし、一線を超える。その感じやすい体に興奮した黒崎は、荒れ狂う性欲を抑えることができず…。
「あうう、よっぱらっひゃったぁ〜…」
居酒屋を出た瞬間にへたり込むすずに驚いて思わず抱きとめてしまいながら、黒崎の胸は年甲斐もなくどきりとした。
「…おっちゃん、飲み過ぎやって言うたやんか。すずちゃん」
おっちゃん、と自称はするものの、黒崎は「おっちゃん」たる不潔感など全く感じさせない、すらりとした長身の男だった。
年齢は40代前半、妻子もいる。
だが、手入れの行き届いた黒々した短髪とつるりとした肌、小綺麗なスーツに身を包んだ姿は、実年齢よりずっと若々しく見えた。
「うう…くろさきさぁん…」
酒のせいか、潤んだ目で黒崎を見つめるすずは、黒崎行きつけのガールズバー店員だ。
すずは人見知り克服のために水商売にチャレンジした、どこにでもいる小柄な娘だった。
そして、黒崎のいわゆる「推し」のキャストである。
いつも潤んできらめく無垢な瞳、天真爛漫な性格、オレンジのように元気いっぱいの笑顔。すずのすべてが黒崎を惹きつけた。
今夜の飲み会は、黒崎の日頃の努力実ってやっと実現した、念願のデートだった。
「ごめんなしゃ…きんちょうしちゃって…うまくあしが…」
「うん、そやね」
「のませゆかや…」
「僕は潰してへんよ」
「ちがうもんっ」
睨んでいるつもりなのか、うるうるした瞳でキリッと見上げてくる。
「…すずちゃん、その目つきは僕に効くで」
「きいちゃえ〜うふふ」
何を言われているのかわかっていないのか、はたまたわかっていて言っているのか、黒崎の腕の中で無邪気に笑うすずに、黒崎は理性を繋ぎ止めるので必死だった。
ーーかわええっ…!
「すずちゃん僕の言うてる意味わかっとんの」
「びーむでてるってことですよね!」
「ちょっ…!抱きつくな、君の言うてる意味がわからん、ビーム出てへん」
「びーる?」
無表情のままいつも通り話をしようとするが、酒でぼんやりした頭と「推し」たるすずの愛らしさに、黒崎の頭の中は着々と性欲に支配されつつあった。
ーー2人とも酔っている。
「あははっ!めからびーる!」
「…楽しいん?」
ーー妻とはもう長いことしていない。
「たのしいんですか?」
「…噛み合わんな」
ーーこの子が欲しい、どうしようもなく今。
「…かわええね」
かなり泥酔しているのか、ゆらゆら揺れながら完全に身を委ねているすずをしっかりと抱きしめ、黒崎はつぶやく。
「…もう僕は知らんよ」
すずに語りかけるように言った言葉だったが、黒崎はそれが自分自身に跳ね返ってきたものだとすぐに悟った。
理性はまだかろうじてある。
だが、自分の中に渦巻くどす黒いものに、黒崎は負けることを決めた。
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