おカタイ上司はアレも硬い?! (Page 2)
チーフの家は本当に近かった。
途中のコンビニでビールとつまみを買って、部屋にお邪魔する。
チーフの家っていうか、男の人の部屋とか初めてだけど、結構平気だった。
最新話の考察が聞きたくてたまらないしリアタイしたいし、万が一襲われたら叫んで近所迷惑かけてやればいいもん。何だったら明日職場でバラしちゃう。
そんな軽い気持ちで靴を脱いだ。
上がった部屋は片付いていた。さすが綺麗好き。
「お邪魔しまーす」
「適当に座れ。買ってきたもんは好きに広げていいぞ」
「はーい」
あと10分。
暇つぶしに部屋を見回したら、本棚にぎっしりと漫画が詰まっていた。
…これは本物ね。ラインナップが素人じゃないわ。
チーフの意外な一面が見えた気がしてくすくす笑う。
テレビの前のソファに陣取ったら、隣にチーフが座ってきた。
「はじまるぞ」
また二人で同時にビールを開けながら、CMが明けるのを待った
*****
「はー…、まじで同じ場所だったわ」
「俺の言った通りだな」
「えーよく気づきましたね」
「あそこのシーンが前に映った時、長回しだったから、多分伏線なんだろうと気づいて繰り返し見てたんだよ」
「主人公がキスしたの、やっぱりあの時の女の子だったんだぁ。もー最高。あー、もっかい見たい!いいですか?」
「好きにしろ」
リモコンを手にすると、録画されたばかりの回をもう一度、オープニングから見直し始めた。
膝を抱えて熱中する私に、チーフが二本目を開けて渡してくれた。何だ、結構優しいじゃん。
画面の中では、主人公が記憶に残っていた動作のまま、彼女に顔を近づけゆっくりと目をつむっていく。
最大の見せ場。キスシーンだった。
「ヒー、えっちだぁ」
「で、礼は?」
「へ?」
「俺の部屋に来たおかげで原田はリアタイできて、俺のこの考察をゆっくり聞けたわけだがその礼は?」
礼?
「あ、ありがとうございます?」
「足りない」
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