勘違いから始まる彼との長い夜
ピンヒールにネイル、突き出た喉仏と女性よりは少し低い声。バーで知り合った、優しくて話の合うきれいな顔をしたオカマ(?)の友だち・カズくんは、私・ミオにとって親友であり、まさに理想の彼氏像にぴったりな男性だった。初めてカズくんを家に招くことになった私は、ひょんなことで彼に組み敷かれてしまう。どうして?カズくんはオカマだったんじゃないの!?少し乱暴に、でも優しい愛撫。彼とのセックスは勘違いから始まっちゃった!
私には変わった友達がいる。
いつもニコニコ笑っていて、掴みどころのない男の人。
行きつけのバーで隣に座っていた彼が気さくに話しかけてきて、仲良くなったんだっけ。
きれいに整った顔と、たばこの似合う長い指先。
細い目元は、笑うとさらに糸のように細くなって色っぽい。
そんな彼は、私を見ると決まってこういうのだ。
「ミオは本当にお人形さんみたいね」
最初に声をかけられたとき、男の人なのか女の人なのか、一瞬わからなかった。
足元はピンヒール、爪にはしっかりネイルが乗っていたから。
でも、喉仏はしっかり突き出ているし、声も女性のそれよりは少し低くて。
ああ、この人、オカマなんだ。
次の瞬間には理解していた。
*****
今日も彼・カズくんと行きつけのバーで待ち合わせをして、たくさん話をした。
他愛もない話を続けているうちに、いつの間にかいい時間になっていて、バーを出た後は私の家で飲み直すことになった。
彼を家に上げるのは初めてで、少し緊張する。
そういえば、ちゃんと掃除してたっけ。
カズくんを玄関に入れて、私はすぐに冷蔵庫へ向かった。
冷蔵庫の中には、昨日買ったおつまみと缶ビールがぎっしり詰まっている。
こんな中身を見たら、彼は幻滅するだろうか。
少しだけそれを整理しようと思った矢先、後ろから「うわあ」と小さな声が聞こえてきた。
「アンタ、二十代前半でその冷蔵庫はアウトよ」
「ち、ちょっと見ないでよ!」
勢いよく冷蔵庫の扉を閉めて、私はカズくんの肩をぐいぐいと押し戻す。
でも、びくともしない。
いつもヒールを履いていたからわからなかったけれど、彼は背が低いわけではなかったみたいだ。
ヒールを脱いだ今でも、カズくんの顔は少し見上げないといけない。
カズくんはあきれたようにため息をついて、私の頭を手でぐしゃぐしゃにかき回した。
「家に上げたのはアンタでしょー。全く、これだから彼氏ができないのね」
「うう…っ!」
なにもいい返せない。
それは事実なのだから。
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