幼馴染みと紡ぐ第一歩 (Page 2)
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お目当てのピンキーリング売り切れ事件から1ヶ月、久しぶりにお兄ちゃんから会いたいと連絡が来た。いつもは3日とか1週間とか忙しくても連絡してくれるのに、何か悪い報告か結婚の報告か色々と考えていると当日を迎えてしまった。
「久しぶりだったね。元気だった」
「うん」
「大学の勉強は難しい」
「うん」
私はお兄ちゃんの質問にただ「うん」としか答えられなかった。
「お兄ちゃんは付き合っている人いるの」
「いないよ」
お兄ちゃんは強めに否定した。
「私、見たの。私がよく行くお店にお兄ちゃんと女の人が入って行って、笑顔で出てくるの見ていたの。だから…」
「ああもう」
お兄ちゃんは髪をかき回しながら、
「こうなるんだよ」
「お兄ちゃん」
私はお兄ちゃんの様子にビックリした。
「君を泣かせると、母さんに手と足を出されて注意されるし、見られたくない場面は見られるし、いっそうのこと言うしかないよね」
その時は、お兄ちゃんが壊れたと思った。珍しく取り乱しているんだもの。
「この後、時間ある。見せたいものがあるんだ」
そう言って、お兄ちゃんは私をホテルの高層階の部屋に連れ出した。
お兄ちゃんが見せたかったのは、この部屋から見えるキラキラとした景色だった。
「いつも子どもっぽいものばかりだから、大人らしいものも」
といって、私が欲しかったピンキーリングを渡してくれた。
「どうして」
「あの日、君に何かしたくて、前にピンキーリングが欲しいって思い出して、それで同僚にどれがいいか相談にのってもらって」
お兄ちゃんの声はだんだんと小さくなりなりながら説明してくれた。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「あと、俺と結婚を前提に付き合って下さい。俺は三十路のおじさんだけど、君のことが好きなんだ」
その言葉に私は固まった。お兄ちゃんが私を好き。お兄ちゃんが私を好き。お兄ちゃんが私を好き。
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