ウブな彼氏に迫ってみた
付き合って一ヶ月。けれど行為はおろか、キスすらもできていない現状に我慢の限界が来ていた。無理強いをしないよう、けれども迫り、なんとか行為に持ち込むことに成功する。初めこそリードしていたものの、ウブな彼も黙ってはおらず…。果たして二人は最後まで行為を完遂することができるのか。
先月付き合った彼氏はウブだった。
手を繋ぐのもぎこちなく、付き合いたては声が上擦って何を話しているのかわからないほどだった。
彼の空回りは愛おしく、例えレストランの予約をし忘れるなどという失敗も笑って許容できた。
しかし、ヒナには一つだけ許容できないことがあった。
付き合って一ヶ月、一度も抱かれたことがないのだった。
*****
とある昼下がり。
今日は彼氏の勇作が家に来ている。
彼のウブさも少しは落ち着いて、お家デートなるものもできるようになったのだ。
「ヒナ〜、冷蔵庫開けるね〜」
「あ、じゃあついでにチョコ取って」
「了解〜」
間延びした返事をしながら勇作がキッチンから戻ってきた。
その手には二人分のお茶と頼んだチョコを持っている。
勇作は慣れたようにヒナの隣に座るとニュース番組が流れているテレビに目を向けた。
彼の横顔をチラリと盗み見る。
決して整っているとは言えないが愛想のよい顔立ち。
笑うとえくぼができて可愛らしいのをよく知っている。
ヒナはさりげなさを装って彼の手にそっと触れた。
「んなぁ!?!はあ!?!」
先ほどまでの落ち着きはどこへやら。
顔を真っ赤にすると勢いよくのけ反り大きく見開いた目をこちらに向けている。
愛らしい反応に、けれどもヒナは口を尖らせた。
「そろそろ慣れてよ」
「い、いやぁ…慣れろと言われましても…」
勇作はチラチラと手元を見ながらなんとか言葉を紡ぐ。
緊張で強張る手を離すまいと握りしめ、ヒナは身を乗り出した。
「付き合って一ヶ月経つのにまだチューもえっちなこともしてないのはやだ!」
「キッ…!?」
何を想像したのか、勇作は沸騰しそうなほど耳まで赤くさせると顔を隠すように手で覆った。
「い、いやぁ…ほら…こういうのは手順を踏んでから…」
「手も繋いだし家にも行ってるしデートはもう何回もしたのに他に踏む手順ってなに!?」
「き、キスとか…?」
苦し紛れの提案にヒナは動きを止めた。
確かに手順を大切にするならそこは通るべきところだろう。
だがしかし、それを待っていては抱かれるのは数年後になってしまう。
ヒナは身を乗り出していた体を落ち着かせると真剣な面持ちで口を開いた。
「なら、キスすればその先もいいってこと?」
「は、はあ!?そそそそそ、そういうわけじゃ…!」
それでも尚テンパる勇作。
ヒナは無理強いは良くないと一度彼から手を離し正座すれば、勇作も慌ててソファの上に正座をするという謎の絵面になった。
ヒナは早まる鼓動を抑えながらなんとか口を開いた。
「私は、勇作と…シたいよ」
緊張した面持ちで顔を上げると、真っ赤な勇作が唾を飲み込んでいるところだった。
彼は覚悟を決めたように前のめりになるも、やはり慣れないのか目線を逸らす。
それでもなんとか口を開いて言葉を紡いだ。
「お、俺だって…ヒナと…したい…」
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