裏切りのクリスマスイヴが思わぬことになりました (Page 2)
『遅くなってごめんね、あと10分で終わるから、19時に駅前で待ち合わせしよう?』
秒でOKのスタンプが返ってくる。
本当は毎年クリスマスにデートしていたけれど、今年は彼氏の都合が合わなくてイヴになった。
クリスマス当日が良かったけれど、急な仕事なら仕方ないし、イヴだって十分ロマンチックだ。
私は必要な事務処理をササッと終えると、リップを塗り直し、こっそりと香水を手首に振りかけた。
彼氏へのクリスマスプレゼントを選んでいる時に見つけた香水で、甘いミルクティーの香りが寒い空気を温かく包み込むような感じがして気に入っている。
最後に前髪を直して、私は急いで会社を後にした。
会社の外の街路樹にはイルミネーションが点灯し、どこからかクリスマスソングが流れ、道行く人の心をワクワクさせてくれている。
イルミネーション見に行きたかったなぁ…。
明日は彼氏が早朝から仕事だというので、今日は彼の家でクリスマスパーティーをする予定になっている。
今年は色々いつもとは違うけれど、仕事なのだから仕方ない。何度もそう自分に言い聞かせて、私はケーキ屋さんへと入った。
予約していたショートケーキを抱え、駅に向かおうとした私のカバンの中で携帯が連続して鳴った。
色々荷物を抱えたままでは携帯と取り出せないので、とりあえず駅の方に向かい、近くの花壇の縁に荷物を置く。
彼氏の姿はまだ見当たらない。
携帯を出すと、時刻は19時7分。そして、彼からメールが数件…。
『ごめん、本当は昨日伝えるべきだったんだけどさ』
ドクンと心臓が鳴る。
『俺たち別れよう。6年一緒にいたし、そろそろお互い違う人を見てもいいと思う』
6年一緒にいたし…?
『それじゃ、メリークリスマス!』
は…?
はぁ…!?
はぁぁぁあ!?
怒りで身体が熱い。口が急速に乾いて喉がキュッと締まるような感じがする。
頭に熱が集まっているのに、なぜか鳥肌が止まらず、しまいには頭が痛くなってきた。
立っているのがしんどい…。座りたい…。そう思って私は花壇の縁に手を添えた。
「真央?」
虚ろな目で呼ばれた先を見ると、心配そうな顔の中田君がいた。
「顔が真っ青だぞ?今日、デートとか言ってなかったか?彼氏まだ来てない感じ?」
「…来ないよ」
「うん?」
「もう来ないの!!!」
なかなかのボリュームに周囲の人々の視線がこちらへ集中する。
みんな幸せそうな顔して何よ、今は幸せかもしれないけれど、この先はどうなるか分からないんだからね!
荒んだ醜い影が心を覆い、見ず知らずの人の不幸を勝手に願う最低な私。
ウキウキで受け取ったケーキの箱やプレゼントの袋が忌々しい…。
「なるほどな…。じゃあ、今から俺んちでクリスマスパーティーしようぜ!」
ニカッと笑う中田君の笑顔が今日も太陽のようで…じゃなくて、今は眩し過ぎるただの白熱電球のようで鬱陶しかった。
ネタバレ含みます。
午前0時すぎても元カレから連絡ないって言ってるのに行為後に時計が0時になってるの時空の合間にいます??😅
ほ さん 2024年3月8日