旅先の開放的な雰囲気の中で (Page 2)
思ったより広い部屋だった。何より窓から見えるオーシャンビュー。
「わー見て、海見える。この辺の海は遊泳禁止だけど、海も来たかったんだよねー」
「休みはいる前そんなこと言ってたから。代わりってわけじゃないけど、プール行こう。水着見せてくれるんだろ?」
何気ない言葉だったけれど、覚えててくれたのか。そーゆーとこだよね、克樹のいいところって。大きな手に指を絡めると、一瞬私を見たけど、離したりはしなかった。
*****
水色のホルターネックのセパレート。下手な原色よりはパステルカラーの方がいいと言われ、好きな色にした。確かにビタミンカラーとか着こなせるイメージないし。
「ど、どうかな。背伸びしすぎた?」
「よく似合う。可愛すぎ。海とかじゃなくて良かった、海だったら見せたくなくて上着脱がせなかったよ」
いつもはめったにそんなこと言わないのに、克樹も浮かれてるんだろうか。旅先の開放的な雰囲気とやらに。泳いだり水かけあったりして、ずっと笑っていた。ただ忘れてはいけない、プールは楽しいけれど疲れる。
「はー、プールの後って異様に眠くなるよね。やっぱ疲れるのかな」
「小さい頃よくプール連れて行ったのは、体力消耗させるためだって母さんがよく言ってたから」
そんな狙いがあったとか知らなかった。そこそこ以上にお転婆だったとは聞いてたけれど。プールサイドの椅子で座って他愛ないことを話す。克樹がテーブルに置いてあった、注意書きのような冊子を手に取る。
「ねえ紬、ここ見て」
「え、どこ?」
ぐっと手を引かれ唇が触れ、離れようとすると後頭部をがっちり固定された。気が済んだのか私の唇を少し舐めて離れた。抗議しようと思ったけれど、別にそう抗議するようなことじゃないなとも思い、何か言いかけたまま結局口は閉じてしまった。というより、愛おしげに細められた克樹の目を見たら何も言えなくなってしまった。
「シャワー浴びて、部屋戻ろっか。少し疲れたし、ね?」
「そうだね」
私の割と唐突な提案にも特に何も言うことはなかった。
来たときと同じく手を繋ぐ。そんなありふれたことがくすぐったい。浮かれたカップルに見えてるのかと思うとなんだか恥ずかしくて、ちょっと距離を取ろうとしたら克樹が詰めてきた。
「なんで離れようとするの」
「は、恥ずかしいから?」
「なんで疑問形だよ。そもそも一緒にいたくて二人で旅行来たのに離れたら意味ないだろ」
そういって少し拗ねたような顔をする。変わんないな、拗ねた横顔は。あんまりかわいいものだから小さい頃はわざと拗ねさせてみたりしたっけ。最終的に泣かれ、つられて泣いた。二人して泣いて親が慌てふためいていたっけ。そんなこと思い出し少し笑う。
「なに笑ってんだよ」
「小さい頃思い出したの」
思い当たることがあるらしく克樹も少し笑っていた。
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