夏の音は花火?それとも…淫らな音? (Page 3)

りっちゃんのアーモンド形の綺麗な目が大きく開かれ、私のおでこから数センチの所で離した手が空中で止まる。
驚きで完全にフリーズしている様子だった。

「りっちゃん…だめかな?」

私はりっちゃんの方に身体を向けて、少しずつ彼に寄る。

落ち着け私の心臓…!今日は絶対に引かないって決めてるんだからっ!

自分の心臓の鼓動が身体全体に響いて、ますます緊張してしまう。でも、今引いてしまえばこのまま一生、私たちの関係性は変わらないような気がした。

「紗奈…あまり驚かさないでよ。俺は紗奈のことを本当の妹のように大切に想ってるんだから」

「ほら!出た!妹、妹、妹って…。私はずっと昔からりっちゃんのことを男の人として好きなんだよ!」

「なんて言ったらいいんだ…。紗奈と…うわっ!!」

眉間も指で揉みながら困ったように話すりっちゃんの顔を見ていられなくなった私は、体育座りしている彼の上に跨った。
とんでもなく大胆なことだけど、絶対に逃がさない気持ちでいた私に迷いはない。

「紗奈、ふざけてないで降りて」

「ふざけてないよ。大真面目だもん…」

じっとりっちゃんの目を見つめた後、私はゆっくりとりっちゃんに近づく。
彼の驚いた顔にどんどん近づき、視界は塞がれる。

私はそっと彼の唇に自分の唇を重ねたのだ。

夢にまで見たりっちゃんの唇は温かくて柔らかくて、このまま時が止まればいいのにと思ってしまうほど心地いい。

離れたくないなぁ…そう思っていたのに。

「んんっ!んっ…ふぁ、さっ紗奈!」

私の下でジタバタと暴れたりっちゃんは、私の腰を掴むと軽々と抱き上げてそのまま立ち上がってしまったのだ。
そして、静かに地面に下ろされる不満顔の私。

「なにやってるんだよ!?度が過ぎるぞ!」

私の浴衣の足元が乱れているのが目入ったのだろう、りっちゃんは慌てて私の浴衣の裾を手前に寄せながら少しだけ荒い口調で私を窘めた。

ふん…だ。

私の浴衣の心配するのもいいけれど、自分の浴衣だって乱れてるんですけれども?

はだけた首元に浮かぶ首筋に、線で結ぶと三角形になるほくろがチラッと見える。
それから身幅が広いりっちゃんの浴衣は、着つけた時にしっかりと余分の下前を奥に入れ込んでいるはずなのに、今ははだけて手前にずれてしまっていた。

さっきまできちんと着ていたのに、乱れた浴衣姿になって慌てた様子のりっちゃんが私の心をくすぐる。
その姿が妙に色っぽくて、もっとその先を見たくなってしまったのだ。

「りっちゃんは私をどうしても女として見てくれないの?」

「…女って。俺は紗奈を大切に想ってるんだよ、だから…下手に手を出してこの関係がおかしくなったら嫌なんだよ」

「それって本当は私に手を出したいって思ってるってことだよね!?」

「うぅ…ん、もう俺も分からない!だからもうこの話はなかったことにして、祭り会場に戻ろう?」

「私はやだよ…」

「紗奈…」

少しずつ後ずさりして、私から距離をとるりっちゃん。
気づけば大きな木に背中がぶつかり、それ以上は後ろへ行けなくなってしまっていた。

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