冷えた体を温めてください (Page 4)
「今、何時です…?」
「うーん、5時半をちょっと過ぎたところ?」
隼人さんの腕枕でウトウトしていた私はその一言で覚醒した。まだ4時くらいかと思ってた。会社帰らないとっ!脚に力とか入る感じしないけど、とりあえず一回帰社しないと!
「彩羽って意外とというか思った通り仕事人間だよね。5分ほど寝てたというか、気を失ってた?時に直帰しますって連絡しといた。雨はやんだけど、スーツもシャツも何もかも渇いてないし。なんか浴室乾燥機能付いてたから。スマホ取りに行くついでに干しといたけど」
よく見たら浴室にスーツが一式かかっている。浴室乾燥ならあと30分ぐらいで大体渇くだろう。冷え切っていたはずの私の体もかなり温かくなったけれど、まだ離れるのは惜しかった。
「疲れた?少し寝る?」
「ん、ちょっと眠くて…」
「眠たげにしてると子供みたいにあどけないな。可愛い」
眠たい目を擦りながら隼人さんを見上げる。そんな愛おし気な目をされると愛されていると勘違いしてしまいそうだ。私から誘ったとはいえ一線を越えてしまった。
「可愛いとか、あんまり言わないでください。勘違いしますよ!」
「なんで?俺は好きな子だけにしか名前呼びも可愛いも言わないけど?」
「え?」
「ん?」
ぱちぱちと瞬きをする。主任の言葉を脳内で反芻しながら意味を考える。はっきりと言われたわけじゃないけど、どう考えても同じ結論に辿りつく。
「いーろーはー、俺を何だと思ってるの?誘われたからって何とも思ってない子、しかも部下に手を出す男だと思われてるの?日頃から可愛がってたのに、新人だったころから目をかけてあれこれ教えてきたのに、酷い。裏切られた」
「え、いや、そうじゃなくて…。こう、私から誘った手前女の子に恥をかかすのは的な思考があったんじゃないかと…」
慌てて言い訳する私を見てくすくす笑う。そこでからかわれたことに気が付いた。膨れて見せると、ごめんごめんと軽く笑われた。
「で、結局俺の片思いなのか?」
「私も好き」
福音を聞いたかのように隼人さんは微笑んだ。
Fin.
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