後輩年下わんこは甘い香りに誘われて発情しちゃいました! (Page 2)

「はぁぁあ~、絶対間に合わない…」

私は誰もいなくなった会社のデスクに突っ伏しながら、チラッと時計を見る。

22時半になっていた。

明日の朝一番に、取引先へ向けた大切なプレゼンがあるのだけれど、資料が仕上がっていないという信じられないミスが定時前に発覚したのだ。

夏也くんの同期である花ちゃんに資料作成を頼んでいたのに、本人は「聞いてません!」の一点張り…。

残って作ってくれない?と頼むと、おばあちゃんが入院しているから病院へ行かないといけないから定時で帰ると言われてしまった。

他の人たちも用事があるとかで、結局私1人で資料を作っている。

明日までに全ての資料を作れるのかな…。私の心は珍しく折れかけていた。

今までなら仕事を押し付けられても、気にせずにこなしていた。
自分では何でもないと思い込もうとしていたけど、あの日給湯室で聞いた私への悪口が引っかかっているのかもしれない…。

「私だって…好きな人はいるのよ…。」

そう独り言を言った時、背後でドアの開く音がした。

驚いて振り向くと、手にコンビニの袋を下げた夏也くんだった。

「えっ?どうしたの?定時に帰ってなかった?」

「そうなんですけど、実は今、同期メンバーで飲み会してたんですよ。そしたら花のやつ、木村主任に明日のプレゼン資料を作るのお願いしてきたとか言ってて」

花ちゃん、おばあちゃんのお見舞いじゃなかったんかい…!

 
夏也くんは、花ちゃんの話が気になって会社に戻ってきたら、案の定マーケティング部だけ灯りがついてたので急いで上がってきたという。

「主任!俺、手伝います!何か出来ることあったら、いつものようにビシバシとご指導よろしくお願いします!あと、これどうぞ」

わざとらしく改まって頭を下げて、コンビニの袋をうやうやしく私に差し出す。

さっきまでの暗い気持ちが一気に吹き飛んでしまった。

「ありがとう、助かる。あっ!いちごミルクだぁ、ちょうど飲みたかったの」

すっかり元気になった私は、彼に大量のコピーをお願いする。

「スゴイ量ですね、これ全部ボディクリームに関するものですか?」

「そうなの、明日のプレゼン相手がボディクリームを販売したことない会社でね。だからメリットを伝えたくて」

「さすが、細かい所までよく気が付きますね!」

「このボディクリームは開発部にとっても頑張ってもらったから、絶対に勝ち取りたいんだよね」

グッと拳に力を込めたポーズをしてイスから立ち上がった私は、段ボールの中からサンプルのボディクリームを取り出して夏也くんに渡した。

キョトンとした顔をする彼の表情がたまらなく可愛い…!

「はい、これが新商品のボディクリーム。開けて匂ってみて?」

ワクワクしながら夏也くんを促す。

「はい…、あっ!この香り!木村主任が飲んでるいちごミルクとそっくりですね!」

「ピンポーン!」

部署の女の子たちと、新しいボディクリームの香りで悩んでいた時にたまたま飲んでいた、いちごミルクから決まった新商品。

いちごの甘酸っぱい香りと、ミルクの優しい香りに包まれながらボデイケアをする時間は楽しいだろうと企画会議は大盛り上がりだった。

「まんま、いちごミルクだ!開発部やりますね~」

クンクンといぬのようにボディクリームの香りを嗅ぐ姿も可愛いっ!もう、なでなでしたいっ!とこっそり心の声で叫ぶ。

気を付けないとここは家ではなく、会社だ。
顔がニヤけていたら大変なので私は急いで仕事モードに脳を切り替える。

「でしょ!?なのに、資料を用意してないとなると全部水の泡になっちゃうよ…」

でも、2人でならどうにかなるかもしれない…!

私は羽織っていたジャケットを脱いで、シャツのボタンを2つ目まで外す。
それから1つに結んでいた髪をさらにギュッと引っ張って気合いを入れ直した。

動きやすくなったし、必要な書類をさっさと作っちゃおうと私は資料室へ急いだ。

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