もう一度君と初恋の続きを (Page 2)

個室風居酒屋でつきだしに出てきたクラッカーを食べながら冬至を見る。よく来るのか適当にいくつか注文している。

「なんか飲む?アルコールもソフトドリンクもあるけど」

「烏龍茶」

「じゃ、あと烏龍茶二つで」

改めて二人となると話題はやはりかつての話になる。主になんで就職が決まった時にしたメールに返事がなかったのかについて。

「返事しようとはしてたよ。窓際で文面考えてたら、同級生にどつかれてその拍子でスマホが校舎の5階から落下。見つかったときにはもう大惨事でデータごと破損してた。そのあとはこっちも就職とかで忙しかったし」

「なにそれ…」

「マジなにそれだよなー。あの無残な姿思い出すだけで涙でそう」

「彼女の電話番号位覚えておいてよ!」

そっち?と冬至が笑い転げる。そりゃ、SNSの無料通話ばっかりで電話番号とか意味ないぐらいだったけど、いまだにこっちは電話番号位すぐに思い出せる。

「最後に会ったのが、20歳だったから8年振りか。今は彼氏とかいる?」

「ううん。いなかったと言ったら嘘になるけど、なんか続かなくて…」

1人、2人ぐらいはいた。でもそれはもう過去の話で、年単位で付き合ったことはなかった。途中から遠恋とはいえ、3年以上続いたのは冬至だけだった。

「俺もー。なんとなく続かなくて。結局、全部瑠香の事思い出しちゃうんだよなぁ。女って鋭いな、私より好きな人がいるんでしょって別れ話の度に言われた」

困ったような笑いに何を言えばいいか分からずにいると、冬至の大きな手がためらいがちに触れられた瞬間、指を絡めて繋いだ時の高揚を思い出させた。

「なあ、あの時はダメになったけど、俺達もう一回やり直せないか?あの頃より大事にするから、もう絶対に離さないから」

そう言ってぎゅっと握った指先からためらいは消えていた。

*****

夜景が見えるホテル。あの頃はどっちかの部屋で、シングルベッドが二人分の重さをうけてスプリングが軋んでいた。ツインベッドでキスをしながら、あの軋みが耳を掠めた気がした。

「もっとキスして。冬至のキス好き」

「俺も瑠香とキスするの好き」

緩く開いた唇から舌が入り込む。逃げ惑う舌を絡め取られ、縋るように冬至の首に腕を回した。久しぶりのキスは噛みつくようなあの頃とは違って、優しいけど激しかった。もっとして欲しい。もう止まらない。

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