私がプレゼンいたします

・作

就職難の中、梓がやっとつけた職業は『大人のおもちゃ』の企画課。ある日会議で決まった新商品の仕様書を届けるついでに、試作品を見に行くことに。開発の主任でイケメンだが変わり者の榊に「試作品を実際につかって見せろ。それで調整する」と言われて…

就職難で手当たり次第にエントリーシートを送ったりした結果、一社だけ採用してくれた。社長が女性の会社で『大人のおもちゃメーカー』だった。業種もろくに確認せず手あたり次第行った結果がこれである。

親には『子供向けカードゲームのメーカー』と言っている。
取りあえず定職を見つけ、企画課に配属されてそろそろ半年。

「生々しいのもありだけど、定番はやっぱりピンクか?」

「視覚効果的にオレンジなんかも捨てがたいよね…」

「ならいっそ二色にして、売れた数で次の商品の色を決めるのもありよね…」

質より量の精神で行われる商品会議では新人もベテランも関係なく自由な発言が許され、社員の八割が女性。女性の為の福利厚生が手厚く、産休育休、テレワーク対応。自由でのびのびした環境が自由な発想を育てるという理由で、休憩スペースも完備。企画課も女性社員しかいない。

「じゃあ、次回作はこれで行こうと思います。梓ちゃんはこれ持って榊さんの研究室ね。ついでに前回の試作品も見てきて」

「え?もう出来たんですか?」

「あくまで試作品ね。微調整の方が時間かかるんですって。じゃ、よろしく」

社員の八割が女性の会社だけど、開発局だけは男性の割合が多い。10人中8人が男性だ。そしてここをまとめる榊主任はイケメンだが変わり者で有名だ。研究室と言う名の個室をもらってる位仕事が出来る人だけど。

「あー、横沢梓。作ったのはいいが、何に使うんだ?」

「フルネームやめてください。説明も文書でお渡ししたと思うんですけど」

「見てない。機能面とデザイン画だけ見た」

なんで用途も分からないものが疑問なく作れるんだろう。そしてクオリティーが鬼。デザイン画が立体化したらこんな感じをキッチリ再現している。

「そうだと思って企画書も持ってきました。ご一読ください」

ぱらぱらっと適当にめくる。黙ってたらイケメンなんだけどなぁ。惜しいな、この人。盗み見る榊主任の顔はこの上なく整っている。

「この仕様書じゃフワフワしすぎてわからん。もっと具体的なのにしろ。表現を端折るな」

「そ、それは…、一度持ち帰って再度検討させていただきます…」

痛いところを。別に面倒だったわけじゃない…、ただあんまりにも生々しい表現は使いたくなかっただけだ。流石に文字として見るのは抵抗があった。

「もう微調整に入りたい。丁度いい、試作品を実際につかって見せろ。それで調整する」

「わ、私がですか?」

「この部屋にいる女は横沢しかいないんだが?考えた側が使えないはずないだろ。実際に見た方が早い」

榊主任に部屋の隅に置いてあるソファーを勧められ、ドキリと胸が鳴る。一度深呼吸した。

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