逃れられない指 (Page 2)

 そうっと熱い腕がお腹に上がってきた。手の平で私を抱き締めるように手が胸までやってくる。ぎゅうっと胸を掴まれて、緩めて、もう一度引っ張られる。揉まれる度にお腹の奥が熱くなった。ブラジャーの上から乳首を指で摘ままれて、頭の奥を擽られたみたいに変な感覚がして、ざわざわする。
 下半身を触る手もざわざわと動き出して、じわじわと追い立てられる。

 ――――たすけて……!

 到着を告げるアナウンスが鳴る。だけどまだ扉が開くのには時間がある。

 下と上から追いつめられていく。声が出そうになるのを堪えるのが精一杯で、段々脚に力が入らなくなっていく。踏ん張って持ち上げていた腰が段々と落ちて行って、壁に体を預けて、与えられる刺激から逃れられない。腰が震えて、まるで自分から指に押し付けるみたいになって、どうにかなりそうだった。

「…っぁ、ぁ…は、んっ…!」

 停止のアナウンスと共に、体が大きく跳ねて、頭の中が真っ白になる。視界がちかちかと眩んで、一瞬だけ、ここがどこだかわからなくなるような。限界に達した体の敏感な部分を擦り続けられて、全身からぶわっと汗が噴き出した。

 やめて、そう呟くより先に扉が開いた。人が一気に降りていき、あっけなく私は解放された。くったりと壁にもたれかかって、重い体を引き摺ってどうにか駅のホームに降りる。ふらふらと人混みを避けてベンチに座り、肩で息をしながら、こっそりと自分の体を抱き締めた。

 まるでまだ私を抱き締める両腕に責め立てられているような感覚が残って、怖くて脚が震えている。それにも関わらず、自らに触れたくて仕方がなくなっている自分がいた。

Fin.

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